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第243話.◇再会④
涙を拭う指が懐かしく感じる。
「脩さんっ……ただいま」
無理矢理にでも笑おうとして変な顔になる。
「うん、お帰り。冬。本当に帰って来る前に目覚めて良かった。俺もリハビリ頑張るよ。先生から歩けるようになる可能性はゼロじゃないって言われてるから」
「僕も早く思い出すね」
「無理はして欲しくない。ゆっくりでいいよ」
「ありがと」
ようやく冬がふわりと昔のように笑った。
脩はこの笑顔を守りたい、これから先一緒に進みたい、そう思って久々に心から微笑んだ。
「次はユウトだ」
「俺か」
「唯 さんですね? ユウトは雰囲気が柔らかくて、新しく来た人とすぐに会話とか弾んでたなぁ」
「そうか? サクの方がそういうこと上手くなかったか?」
「そりゃどーも。ほら、早く大切な人の所行ってやれよ」
ポンと背中を押されて少し前に進む。
「夕君だ。ずっと待ってようと思ってたけど、待ちくたびれたよ。でもね、会えたから全部帳消しだよ」
「なんか、ごめん」
「どうして、謝るの?」
抱き着きたいと思って一歩だけ前に出した足を止める。
「不安にさせて、たくさん待たせて、ごめん」
前と変わらず優しい夕斗にホッとする。
唯の止まった足がまた動く。
ぶつかる様に抱き着きたかったが、転んで怪我をしたら大変なので目の前で立ち止まってからギュッと抱き締める。
夕斗は唯の髪の毛をすいてから右手は首の後ろ辺りに左手は腰の辺りに回して抱き締める。
「夕君、お帰り」
「ただいま、唯」
夕斗の抱き締め方も以前と一緒で、本当に帰って来たんだと唯は喜ぶ。
「待っててくれてありがとな」
「うん」
「ちゃんと思い出すから、もう少し待ってて」
「うん、待つ」
2人で未来を考えられるのなら、待つ事も苦にならない。
「ありがとう、唯」
「待つから、思い出したらお願い聞いてくれる?」
「1つだけなら」
「じゃあ考えとくからね」
「ん」
夕斗は少し嫌な予感もしたが、それは杞憂に終わることになる。でもそれはまた別の話だ。
「次はヒサギだな。待たせてごめんな」
「いや、みんな幸せそうで良かったよ」
「羽実 さんですね? ヒサギはムードメーカーで、いつでもみんなを明るくしてくれた」
「え? 俺が? そうだったかな???」
「そうだったよ。ほら、待たせたから早く行ってやれよ」
「ん? ああ」
どこにいるかよく分からないが目の前にいるのか?
「えっと?」
「緋紗輝のバカっ! 急にいなくなって、どれだけ心配したと思ってんだ!」
「え? ごめんなさい」
急に怒られて反射的に謝る。
それにしても他の人と対応が違いすぎやしないか?
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