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第244話.◇再会⑤
「離れてみて、緋紗輝が俺の中でどんだけ大切な存在だったか分かった。それなのに、覚えてないって何だよ」
段々と声が小さくなっていく。
少し鼻をすするような音がする。泣いてる?
「ごめん………なんか謝ってばかりだな」
手を伸ばしてみるが、何にも当たらない。結構遠くにいるのか?
「本当に見えないんだね」
手を握られる。
その手は自分よりも小さい。
「思い出せなくてごめん。でもちゃんと思い出すから」
「当たり前だ! バカっ」
きっと以前からこんなやり取りをしてたのだろうと思うと微笑ましい。
「緋紗輝?」
「ん?」
「ちゃんと思い出したら教えてな。言いたい事があるから」
「今じゃダメなのか?」
「ダメ」
「分かった」
言いたいことって何だ?
何の予想も立てられない緋紗輝は首を傾げる。
羽実はその日のことを考えて顔を真っ赤にしていた。
「羽実、迎えに来てくれてありがとな」
「来るのは当然だ」
「そうか? でもありがとな」
「ん。しばらくは俺が緋紗輝の目になってやるから」
「そっか」
緋紗輝は手探りで羽実の頭に手を持っていくと、頭を撫でた。
羽実からは恋愛とかそういう甘い感情は伝わってこないから親友とかそんな感じだろう。
でも自分はどうだ? おそらく恋愛感情を持っていたのではないかと思う。
とりあえず、全ては記憶が戻ってからの話だな。
緋紗輝は羽実とどう接するのがいいのか悩むこととなってしまった。
「俺達はもう思い出してるし、サポートはいいよな?」
「サクも早く婚約者の所に行きたいよな?」
「ったく、シンはうるせぇよ。ま、否定はしないが」
「サクは私の代わりに年長者として色々としてくれて有り難かった。本当にありがとう」
咲弥と新一郎のやり取りが終わるまで待つのは長いと分かっている和泉は、少しの合間に挨拶をねじ込んだ。
「イズミは相当コミュニケーションスキルが上がったよな。これからも周りにいるのは俺達だと思って接すれば大丈夫だよ」
「そうね。あなた達は特別だけどそう考えるようにしてみる。じゃあ、私はお先に」
「あぁ」
「俺達もいくか」
「そうだな」
「和泉」
「有栖 、会いたかった」
ギュッと抱き締め合う。
「さっきの聞こえたよ?」
和泉がギクリと体を震わせる。
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