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第245話.◇再会⑥

「さっきのって……」 「いつから和泉が攻め側に? 私とは殆ど受け側のリバだよね?」 耳元で囁かれる声が甘くて胸がキュンとする。 「だって忘れた時に自分は攻め側だって信じて疑わなくて、そう行動してて思い出してもそれは崩せなかったのよ」 首筋にキスをされペロッと舐められる。 「んんっ、ちょっと、有栖?!」 和泉は有栖から少し離れる。 「こんな可愛い反応する子のどこが攻めなのかしらね」 「お願い、みんなには言わないで」 和泉の言葉に有栖は少しだけ考える。 「んー、いいけど、また一緒に暮らせるようになったら……分かってるよね?」 エロい顔をしてニヤリと笑う有栖に和泉は顔を真っ赤にした。 「うん。……あれ? 一緒に住むのはすぐには無理なの?」 「この後全員入院だって聞いてるけど?」 そうか、全員サファイアは使われているし、目が見えていても見え方はおかしいから。 和泉も白黒とカラーが混ざり合って見えている。 もう慣れたが、見え始めは気持ち悪くなることも多々あった。 「何? そんなにすぐにシたいの? じゃあ病院でスる?」 「バカっ、病院でなんて変なこと言わないで。………シたいよ? でも家に帰ってからがいい」 病院で誰かに見られたらなんて思ったら、やっぱり無理。でも、有栖と抱き合いたいとは思う。 和泉は有栖のコートの袖口をキュッと掴む。 「そんな可愛いことされると我慢できなくなるからやめて。まあ、そういう事は二の次で、帰って来てくれてありがとう。帰って来ないかもと思って他の子探そうとしたけど無理だった。私には和泉しかいないから」 「有栖、私もあなただけだよ」 他の子との未来を有栖が選んでいたら今ここにいなかっただろう。 そんなことにならなくて良かった。 「これから先の人生は全部有栖にあげる。だから有栖のは私に頂戴?」 「いいよ。貰うしあげる。和泉?」 「ん?」 もう一度抱き締め合うと有栖に耳元で囁かれる。 「愛してる」 「私も、愛してる」 とにかく幸せで、和泉は外に出られたことを心から喜んだ。 「新ちゃん!」 「陽菜( ひな)、待たせてごめん」 陽菜は目尻に涙を溜めて新一郎の目の前に立つと、首を横に振った。 「俺はつい最近陽菜のこと思い出したけど、陽菜は1年以上も………諦めずに待っててくれてありがとう」 「色んな人から告白はされたけど、全部断ったんだよ?」 陽菜はとにかくモテる。恋人がいると分かってても告白されること自体が日常茶飯事だ。

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