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第246話.◇再会⑦

「その中に良さそうな人はいなかったの?」 「いる訳ない。新ちゃんじゃなきゃダメなの」 ぷうっと頰を膨らませる陽菜を久々に見たが、やっぱり可愛い。 ギュッと抱き締めるとそのままおでこにキスをする。 「もうどこにも行かないでね。ずっと一緒がいいの」 見上げて両手で顔を触られる。 左手も右手も見るが、指輪をしていない。 拉致される直前に婚約指輪を見に行ってデザインも決まり、入金も済ませていた。 後は受け取りだけだった。 「指輪は?」 「一緒に取りに行きたくて、頼んで取り置きしてもらってるの。新ちゃんが退院したら一緒に行こうね」 幸せそうに笑う陽菜が可愛くて、愛しくて、引き寄せられるようにキスをした。 「ずっと一緒だよ。幸せにするから」 「うん」 「随分嬉しそうだな」 「(こう)。みんなのこういう笑顔は初めて見るからな」 「そうか」 大切な人っていうのは本当に大きな存在なんだと、咲弥は改めて実感する。覚えていないはずのみんなも笑顔で話をしていることが凄い。 自分も大切な人に向き直った。 「航、たくさん待たせてごめん。ずっと会いたかった」 真っ直ぐに見つめて本心を言う。 「最悪なことまで考えてた。だから今目の前にいる事が本当に嬉しい。咲弥、お帰り。生きててくれてありがとう」 航が素直に気持ちを口にする事はかなり珍しい事だ。 だから少し照れて頰が赤くなっている。 「いつもそうやって思ってる事口に出すようにしてくれるといいな」 嬉しそうにニコニコする咲弥は、今の航にとっては目に毒だった。 「今だけ、特別だ」 ふいっと視線を逸らすから、咲弥は航との距離を縮める。 「航は照れ屋だな」 咲弥は航の首に腕を回すと額と額をくっつける。 「そんなんじゃない」 「今は素直な時じゃないのかよ?」 甘えるような、ふてくされてるような咲弥が可愛い。 「航?」 「ん?」 「好きだよ。……航は?」 咲弥の記憶では『言わなくても分かるだろ?』と返されたことしかなかった。 「一度しか言わないからな。………愛してるよ」 ボソボソっと呟くように言われた言葉は思いもしないもので、驚きと共に嬉しさが身体中に充満して堪えてたはずの涙が溢れてきた。 「泣くなよ」 「こんな………シラフで言われる、なんて、思わなかった、から」 ギュッと抱き着くと航も抱き締めてくれる。 もう二度と会えないかもしれないと何度も思ったからこそ、今こうして本人に触れることが嬉しい。 「あーヤバイ」 「どうかしたか?」 航の匂いだ、と首筋で鼻で呼吸をしていた咲弥が首を傾げて航の顔を見る。 「今すぐ抱きたくなった」 「………はあ? バカっ、何考えてんだよ!」 すぐさま離れようとする咲弥を航は更にギュッと抱き締める。 「何ってナニだよ。この後入院じゃ無ければ咲弥が失神するまでヤるのになぁ」 「失神しても続けんだろ? ったく俺もなんでお前がいいんだろうな」 みんなに自分のをデカイと言われたが、航のは俺よりもデカイ。そして長い。S字なんて当たり前だし、全部入れられると頭がおかしくなりそうになる。 しばらく使ってなかったから、アレを受け入れるには準備をしっかりしないといけない。 「退院したらヤるからな」 「分かってる。俺だってしたくない訳じゃないから」 顔を真っ赤にして、そんな事を言う咲弥の可愛さに、航は掠めるようにキスをした。 「航?!」 「後でもっとじっくりしような」 こんな風に中途半端に手を出されるともっとして欲しいと思ってしまう。だから性的な意味では触らないようにしていたのに。 咲弥のそんな考えとは裏腹に航は少し満足したのか、ニコニコとしている。 咲弥はやっぱり航のことが大好きだと再確認して、微笑み返したのだった。

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