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第250話.◇語るに落ちる

「Sというのは、サ………」 「待って下さい。それを口にするのは慎重になった方がよろしいかと」 「小泉くん、私はこれに今後の大野の家を託すと決めた。それとも君は私の息子を信じられないと言うのかね?」 バカ親父の圧倒的なオーラに小泉は口をパクパクとさせる。 「そのようなことは断じて」 かろうじてそれだけ言うと小泉は黙った。 全く嬉しくないが、どうやらバカ親父は俺のことを信じているらしい。 それならそれを見逃す手はない。 「あの?」 何の話をしているのか全く分からない風を装い、首を傾げた。 「明、Sというのはサファイアのことだ。聞いたことくらいはあるだろう?」 「サファイアってあの危険ドラッグの? 根絶したと聞いているが?」 「それは建前だ。国は全てを焼却したと思っているが、警察内部にはまだ純度の高いサファイアがある。その購入の窓口が小泉くんだ」 知りたいことをペラペラと話してくれてありがたい。 「小泉さんはそうとう階級が高いですよね? 警察でも一部の人しかSがあることを知らないということですか?」 バカ親父の前であれば何を聞いても答えてくれそうで、とにかく質問を考える。 「サファイアのことを知っているのは一握りだけです。私よりも階級が高くても知らない人もいます。先ほどの名刺の裏に番号が書いてあります。それが連絡先となりますのでお忘れにならないようお気を付けて下さい」 名刺を裏返し、そこに書いてある携帯の番号を確認すると微笑んで頷いた。 その微笑みは男も女も魅了するらしい。 現に小泉もいい歳をして頰を赤らめて目を逸らした。 気持ち悪い。 「そういえば、さっきSは購入するって言ってたが、かなり高いんだろうな」 「純度が高いものですからね。1gが3万円です。支払いは警察の活動資金として寄付をして頂く形となっております」 寄付ね。法をかいくぐるにはそれを使うしかない、ってところか。 「なるほど、そういう仕組みになっているのか。Sはあとどの位ある?」 興味を示すフリ。 「そうだ、それは私も聞こうと思っていた」 興味津々のバカ親父。静に使うつもりか? だとしたら、本当に最悪だ。 「そうですね………50gはあったかと思います」 50gね。値段にして150万円か。 バカ親父の顔を見ると少し微笑んでいる。 俺が関与する前に買われてしまいそうな勢いを感じる。 「親父、家にはどの位残っているんだ?」 「うちにか? 50g以上あると思ったが。購入は1gを切ったら考えるようにしている」 新しく買うのはまだまだ先か。 出来れば両方にサファイアが残っている状態で告発が出来ればと思う。 まだ続く2人の話に俺は神妙な顔をして頷くのだった。

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