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✲第263話.◆捨てる
✳︎秀明×静を含みます
✳︎無理矢理・流血・暴力の描写を含みます
裕美さんが死んだと聞かされ、無理矢理秀明さんと繋がった。
「どこが嫌なんだ? こんなに中が動いているじゃないか」
心は嫌だと叫んでいる。でも秀明さんの言う通り、しばらく放って置かれていた身体は、久々に入ってきたモノを離さないようにと蠢いていた。
嫌なのに………こんなに心は冷えて凍りつきそうなのに、身体は熱く火照っている。
それを認めたくなくて、また首を横に振る。
「何が違う? ここも気持ちいいよな?」
胸の辺りに手が這わされ、さっき付けられた傷に触る。
痛みが一瞬きた後にキュッと乳首を摘まれて頭の芯が快感でボヤける。
「ここを触ると中がよく締まる。気持ちいいよ、裕美」
どこまで行っても僕が望まれる事はない。
別に秀明さんに望んで欲しいなんて思わないけど、いつだって誰かの身代わりで、僕自身なんていらないものなんだって眼前に突き付けられる。
このまま傷をえぐって大量に血を流したら、もうこんな気持ちにならなくて済む?
生きてるってこんなに苦しい事だっけ?
秀明さんがそこを出入りしているのはわかっているが、僕は全く別のことを考えていた。
頰に衝撃が走って、さっきと同じところを叩かれたと気づく。
口の中を切ったのか血の味が広がる。
「何を考えてる? 私に集中しなさい」
何も考えちゃいけない?
人形になれたらいいの?
「何も考えられなくしてやる」
首輪の下に秀明さんの指が入って来て力を込められる。
息が出来ない
やっと死ねる?
意識が遠のきそうになったところで手が外されて酸素が急に入ってくる。
「………ゴホゴホッ……ひゅっ………」
息をするのも苦しい。
「首を締めると胸を触った時よりも中がよく締まる。ほら、もっと頑張らないと終わらないよ? 死ぬ気になれば何でも出来るだろ?」
終わらないって……ずっと秀明さんが中にいるってこと?
もう訳がわからない。
自分は性欲処理の道具でしかない。道具なら道具らしく何も考えなければいい。
いつの間にかそんな結論に至った。
抵抗しようとしていたのをやめて、力を抜く。
秀明さんが欲望を吐き出して、いつものようにそれを口に突っ込んでくる。
ペロペロと舐めて綺麗にする。
これも道具の仕事。
秀明さんとの行為に心は必要ない。
嫌だと思うこともエネルギーの無駄遣い。
いや、この行為だけじゃなくて僕自身に心なんて必要ない。
何も考えなければ、苦しいことも悲しいことも無くなる。
この日を境に僕は心を捨てた。
ここにいるには必要の無いものだから。
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