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第266話.◇◆湖
✳︎虐待の描写があります
✳︎前半は明視点、後半は静視点です
北海道に行こうとした日は寒波の影響で新千歳空港が猛吹雪で飛行機の発着が出来ない状況が続いた為、行きたい場所に近い釧路空港に行き先を変更した。
北海道に到着したのは2人がいなくなってから5日後だった。
釧路空港のすぐそばでレンタカーを借りて摩周湖の近くにある物件に向かう。
いるかどうかも分からない為、俺が1人で向かう。
親父がいた場合、その場で警察に連絡をすると話し合いの結果決まっていた。
とにかく静がどんな状態にあるのか、それが心配で仕方がない。
雪道の運転は慣れてはいるが、スピードを出し過ぎて事故なんて起こしている場合ではない為、はやる気持ちを抑えて安全運転で向かった。
小宮山さんからもらった資料の物件を見つけた。
外には一台の車。
ドアに手をかけると鍵がかかっていなかった為にスッと扉が開く。
中に入ると部屋はとても暖かい。
「静! ………いないか」
2人の姿は見えない。
摩周湖まで歩いて数分であることを考えると、そちらに行っているのだろう。
この部屋の暖かさから出て行ってそう時間は経っていないと思い、走って摩周湖へ向かう。
ーーーーー(視点切り替え)ーーーーーー
ここに来てから日課になっている湖への散歩。
秀明さんはとても暖かい格好をしていると思う。
でも僕に与えられたのは大きめのTシャツ1枚だけ。
靴も無いから裸足で歩くしかない。
外の空気は刺すように冷たく、雪が積もっているのか足も感覚が無くなる程だけど、立ち止まると殴られるから足を動かすことだけを考える。
道具になるって決めたけど、道具も壊れることがあるって忘れていた。
湖畔に着くとTシャツは剥ぎ取られて、湖に入る様に言われる。
冷たい水に浸かってしばらくすると体が慣れるのか温かさまで感じる様になる。
でも、その頃を見計らって鎖を引っ張られるから体が動いて冷たさがぶり返す。
寒くてガタガタと震えるが湖から上がることは許可されない。
「なあ静。人はなかなか死なないな。それなのにどうして裕美はあんなに呆気なく死んだんだろうな」
湖から上がりたくて入った所に近づくと棒のようなもので体を押される。
水の中で足がもつれて倒れた。
息を吸い込んでいなかったからすぐに苦しくなる。
足が付く所なのにパニックになり、水が口に入ってきてどうしていいか分からなくなる。
必死にもがく途中でこのまま道具として動かなくなってもいいんじゃないかと思い、力を抜いた。
苦しさも和らいで湖の中で何かに触って、そのまま暗闇の中に落ちていった。
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