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第269話.警察

「もしもし、やはり北海道にいました。……えぇ、今目の前にいます。………分かりました。それまでここに一緒にいます」 話し合った東京の刑事さんに連絡をしたら、渡しておいた不動産購入履歴から住所は分かるから、地元の警察官を向かわせるとの事だった。 静はあれからピクリとも動かないが息はしているので、バカ親父を警察に引き渡したら病院に連れて行こう。 「どこに連絡した?」 「警察だ」 「私を逮捕など出来ないぞ? 静は自ら付いて来たのだからな」 「静のことは関係ない」 「何?」 隠しても仕方がない。逃げようとするのなら拘束すればいい。 「あんたはサファイアの件で指名手配されている。小泉さんももう捕まったよ」 「私を売ったのか? 大野家はどうなる?!」 結局大事なのは“家”なのだ。 「裕美に許可をもらったからぶっ壊すよ。東京に戻ったら記者会見でもして、そう公表する。あんたは大野家の当主になって変わってしまった。本当は自分でも分かっているんじゃないか?」 「変わった……?」 不思議そうな顔をしているのを見ると、分かっていて欲しいと願った自分が馬鹿みたいだ。 「その辺は刑務所でじっくりと考えろ。おそらく外に出ることももう無いだろうからな」 サファイアを国に黙って保有していた警察も、バカ親父もただでは済まない。 警察の上層部も関わっていた人間を全て解雇し、刑務所行きを決めたらしい。 終身刑か、禁錮50年か、裁判での判決がどうされるのかまだわからないが、サファイアの所持及び使用となると生きているうちに外に出ることはもう無いと断言できる。 「私が、刑務所に?! この私が?!」 「お前は単なる1人の人間だ。神ではない。きちんと裁かれろ」 警察官がやって来ても親父は逃げようとしなかった。 手錠をかけられて、ようやく事の次第を把握したようだった。 「明」 「何だ?」 「静に謝っておいてくれ。いや、思い出したくないだろうから私も死んだと伝えてくれ」 「警察に捕まったと事実を伝えるよ。お前の家族は俺しかいないから、気が向いたら会いに行ってやる」 力なく微笑んでから床のラグの上で寝ている静を見て、親父は警察に連れて行かれた。 すぐに拓海に電話をかけた。 『明さん?』 「静は無事だ。だが全く動かないのが気になる。こっちの病院に連れて行こうと思うが、釧路辺りで良い病院しらないか?」 『確か、系列の病院があったはず。LINEで詳細は送るね』 「ああ。鈴成くんは? そばにいるんだろ?」 『変わるね』 やはり一緒にいたらしく、すぐに鈴成くんに変わった。 『あの?』 「鈴成くん、静は無事だ。でも衰弱していてね、こっちの病院でしばらく様子見になると思う」 『良かった無事で』 「なるべく早く東京の、一緒に過ごしていた人達と同じ病院に移せるといいと思っている」 『連休を取るのは難しいので俺はこっちで待ちますね』 本当ならすぐにでもこちらに来たいだろうに。 病院に連れて行けば、静もすぐに目を覚ますと思っていた。 それが楽観的な考えだと分かるのは、この後すぐの事だった。

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