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第317話.伝えたい言葉
✳︎時間経過に注意
敦の話は衝撃的だった。
たまに影を感じることもあったけど、それは気のせいだと思っていた。
いつも明るい笑顔の敦を誠も僕も頼りにしていた。
もしかしたら頼り過ぎて悩ませていたのかもしれないと思うと申し訳なくなる。
「静も怖いの? でも鈴先生はどんな静でも受け入れてくれるよ。大丈夫。オレが保証する」
敦も怖いって思ってたんだ。大丈夫だって見せてたのは強がりだったの?
『長谷くんも受け入れてくれるよ。大丈夫』
敦に届いて欲しいと強く思う。
「でも、やっぱりいらないって言われるのは怖い」
それは僕も怖い。でも、怖がって前に進めないのは何かが違う気がする。
『大丈夫。お互いに相手を信じようって言ったの忘れたの?』
そう伝えたいと思いながら、自分は信じられるのだろうかと不安になる。
「覚えてる。じゃあ、静も鈴先生のこと信じなきゃダメだから」
そう返されて、届いてほしいと思った言葉は届いていたと分かった。
それにやっぱり敦には僕の考えてる事が分かっていた。
「そしたら、鈴先生と代わるね。長い話聞いてくれてありがとう」
きっと涙を流してる。
体が動くのなら敦のこと抱き締めるのに。
敦が出ていって少ししたらまた人が入ってきた。
会話をしているのは雰囲気で分かるが、その声は小さくてなんと言っているのかは分からない。
「本島、敦には本島が必要なんだ。ずっと本島を思って泣いてる。俺は支えになりたいって思ってるけど、なかなか上手くいかない。早いとこ戻って来てくれないか?」
長谷くんの声だ。
良かった。敦のこと好きなままでいてくれるんだね。
本当に戻っていいのかな?
長谷くんの話からすると僕が敦の支えになるって思われてるみたい。
違うよ。支えられているのは僕だよ。
誠にも敦にも出会えなかったら、泣いたり笑ったりすることを思い出すこともなかっただろうし。
寮で襲われそうになったのも、未遂で終わることはなかったと思う。
鈴成さんへの想いに気が付くこともなく、学校を変えていただろう。
今回の事はどうだったかな?
明さんは僕を助けようとしてくれたと思う。
でも湖で溺れた僕を助けられなくて、死んでたかな。
あの時、本気で死んで楽になりたいと思っていたから。
またみんなの会話が聞こえなくなって、自分の暗い思考に囚われる。
敦が戻って来たのが分かる。
きっと色んなことをグルグル考えているんだと思う。
僕と同じように。
『敦、自分の気持ちに素直になって』
伝えたいと思った言葉は自分への言葉にもなる。
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