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第321話.好きの違い

「それが嫌だったの?」 「だって、長谷くんは敦と付き合ってるんだよ。なのにどうして?」 「確か長谷くんと芹沼くんは小さい頃からの親友だよね?」 前に聞いたのを思い出す。 「誕生日も近くてほとんど一緒に育った兄弟みたいだって言ってた」 「なら、単なるスキンシップじゃないかな? 誠くんだって敦くんとギュッてすることあるでしょ?」 僕が敦とギュッとするのと、さっきのギュッは一緒? ヒロくんの長谷くんへの想いは友達の好き? 「僕、友達の好きと特別の好きの違いが分からないの」 「そっか。誠くんは分からないと考えるのやめちゃうでしょ? 今回は僕と一緒にしっかりと考えてみようか」 その違いが分かるとこのズキズキの正体も分かるのかな? 「拓海さんも一緒に考えてくれるの?」 「うん」 ふわあって笑う拓海さんの回りにはお花が咲いたみたいになる。 「まず、敦くんと静くんを好きだと思うのと、芹沼くんを好きだと思うのは一緒?」 敦と静は友達の中でも特別。これは親友っていうのだって知ってる。 ヒロくんは………? たぶん、親友とは違う。長谷くんに対する友達とも違うと思う。 「ヒロくんは敦と静、長谷くんとも違うの」 「どう違う?」 「え?………どう?」 「ゆっくりでいいよ」 何が違うんだろう??? 「ヒロくんとはね、お休みの日にはよく一緒に買い物に行くの」 「うん、それで?」 「いつもはぐれないようにって手を繋ぐんだ。その手はね、あったかくてドキドキするの。胸がぽわんてあったかくなるんだよ」 思い出すと笑顔になっちゃう。 「じゃあ、芹沼くんが他の人と誠くんと同じように手を繋いでお出かけするのは、どう思う?」 「他の人と?」 「うん。例えば告白してきた子とか、ファンクラブの子とかかな?」 目を閉じて、この前ヒロくんに告白してきた可愛い女の子と手を繋いでいるところを想像する。 楽しそうに笑う笑顔も、歩く速度を合わせてくれるのも、見つめてくる目も、僕じゃない人に向けられる……… ズキン そんなのは嫌だって思う。 「嫌だ」 「何が嫌?」 何が? 全部 え? 僕、全部嫌なの? 「全部、嫌なの」 声に出したら、止まらなくなった。 「ヒロくんが他の人と手を繋ぐのも、一緒にお出かけするのも、嫌なの」 心が狭いよね。 もしかしたら、ヒロくんは一緒にお出かけしたいって思ってるかもしれないのに…………。 「ヒロくんがそうしたいって言っても、嫌っ!」 「そうだね。嫌だよね。なら、誠くんは芹沼くんとどうなりたいの?」 不思議な質問をされて、訳が分からなくなる。 でも、今日は考えるのをやめないって決めたから、ちゃんと考えるの。

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