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第322話.考える
僕はヒロくんとどうなりたいのか、という拓海さんからの不思議な質問の答えを探すけど、どんなに探しても見つからない。
「拓海さん、ヒロくんとどうなりたいのかなんて分からないよ」
「難しく考えないで。たとえば、この先も買い物は一緒に行きたい?」
拓海さんが簡単な質問に変えてくれた。
「うん。行きたい! ヒロくんはね僕のお洋服も選んでくれるんだよ。それにね、集めてる雑貨を探すのも上手いの。ランチも美味しいお店知ってるし、スイーツのお店も連れて行ってくれるんだ」
「そう。芹沼くんはいつも誠くんが楽しいようにって考えてくれてるんだね」
「え?」
僕が楽しいように???
そういえば雑貨屋さんでは探すのを手伝ってくれたし、スイーツのお店でも自分は食べずに僕が食べるのを見てる。
「もしかしてヒロくんは楽しくなかったかな?」
ズキンズキン
胸の辺りがまた痛くなる。
「たぶんだけど、芹沼くんは誠くんが楽しいと自分も楽しくなるんじゃないかな」
僕が楽しいとヒロくんも楽しいの?
「………あっ! 前に言われた好きな人が世界の中心になって、世界が回るってあれ?」
「そう、それだよ。誠くんはどうかな? 芹沼くんが中心にいない?」
ええ???
………ヒロくんは何処にいるんだろう?
真ん中近くにいる気はする。
でも、拓海さんの勘違いでヒロくんの世界の中心が僕じゃなかったら?
そうしたら僕の世界の中心がヒロくんだとしても上手くいかない。
ズキンズキンズキン
「拓海さん、僕病気かも」
「胸が痛いの?」
「どうして分かったの?」
拓海さんは椅子を持って僕のすぐ隣に座って、抱き締めてくれた。
「胸が痛くなるのも恋の1つだよ」
「え?!」
「胸が痛くなった時に考えてたことは、起きて欲しくないこと。つまり逆の事が起きてほしいってこと」
考えてみる。
長谷くんとヒロくんが抱き合ってるのを見た。
ヒロくんが最近は苦しそうな顔ばかりで、笑わない。
ヒロくんが探しに来ない。
楽しそうに笑う笑顔も、歩く速度を合わせてくれるのも、見つめてくる目も、僕じゃない人に向けられること。
僕と一緒にいても楽しくない。
ヒロくんの世界の中心が僕じゃない。
逆だから………
長谷くんとヒロくんは単なる友達。抱き合ってたのも単なるスキンシップ。
ヒロくんにはいつも笑っていて欲しい。
ヒロくんに探しに来て欲しい。
楽しそうに笑う笑顔も、歩く速度を合わせてくれるのも、見つめてくる目も、僕にだけ向けられる。
僕と一緒にいると楽しい
ヒロくんの世界の中心が僕
「これって………」
「ほら、もう分かったよね?」
「でも………」
「僕は好きでもない人と手を繋いでドキドキしたり胸があたたかくなることはないと思うよ?」
考えてみたらとっくにヒロくんが僕の世界の中心にいたことが分かったの。
「僕、ヒロくんのこと………」
言おうとしたら拓海さんの指が唇に当てられて言葉を飲み込む。
「それは、本人に言わないとダメ。芹沼くんを連れてくるからここにいてね」
ヒロくん来てくれるかな?
僕が言うことにもう遅いって言わないかな?
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