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第324話.お揃い
みんな恋をするとその人が世界の中心になるんじゃないの?
「シャツ、離して」
ぶんぶんと首を横に振る。
「何で? 今俺は振られたんだよ?」
「ちがうのっ!」
ちゃんと言わなきゃ
「だから………」
「ぼくもっ、すきなの」
「え?………今なんて?」
「好き」
少しの沈黙の後、溜め息が聞こえた。
「友達として、だろ?」
「ちがうの。とくべつのっ……好き」
ヒロくんの雰囲気がいつもと同じに戻ったらホッとして涙も止まった。
「やだって言ったのは?」
「一緒にいられなくなるのは、やだって言ったの」
恥ずかしくてヒロくんの顔が見られない。
「俺の早とちりかよ。ごめん、泣かせちまった。俺最低だ」
「ううん。僕がいけないの。勘違いさせるようなこと言ったから」
ギュッて抱き締められて、初めてヒロくんの背中に腕を回した。
「もう、絶対に泣かせたりしないから。俺と付き合って下さい」
「………はい」
たった2文字だけなのにそれはすごく甘くて、酸っぱかった。
あれ? 付き合うって何をするんだろう………?
敦と静はなんて言ってたっけ?
…………あ! そうだ、キスしたって言ってた
僕もするのかな?
「ねぇ、ヒロくん?」
「ん? もしかして痛かった?」
「ううん。そうじゃなくて、付き合うとキスするの? 僕達もする?」
疑問に思ったから聞いたけど、キスって唇と唇がくっつくんだよね………。
あれ? 凄く恥ずかしいかも。
急に顔に熱が集まってきた。
「したいけど、それはまた今度な」
「う、う、うん。そうだよね!」
「だから今はこれだけな」
目が合ったらニコって笑うヒロくんがカッコいい!
そう思っていたらおでこに柔らかい感触がして“チュッ”て音がした。
え? え? え?
おでこにキスされた?
おでこが熱くなる。
きっと僕の顔真っ赤だ。
あ、ヒロくんも真っ赤。
へへっ。お揃いだね。
「誠?」
「なに?」
「キスもエッチなことも、俺達は俺達のペースで進もうな」
「エッチなこと? あっ、敦が長谷くんとしてるようなこと?」
「うん。こういうのは競うことじゃないから」
「分かったの。でもね、どんなことしてるのかは知らないの」
敦はエッチなことすると、相手を直に感じられるって言ってた。
よく分からない。
きっとヒロくんが分かってるよね?
「ねぇ、静のところに戻ろ?」
「そうだな。戻ろうか」
早く敦と静に報告しなくちゃ。
好きな人ができて、その人はヒロくんで、付き合うことになったよって。
嬉しくてニヤニヤしちゃうの。
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