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第325話.天使

静の病室に戻ったら一斉にこっちを見られた。 「敦! 静も……僕ね、ヒロくんにちゃんと好きって言ったんだよ。付き合うことになったの」 「そっか。良かったな。………あれ? 誠泣いたか?」 「えっと、うん。少しだけ」 なんとなくヒロくんを振り返って見たら、長谷くんと凄く楽しそうに話しててちょっとモヤモヤする。 「おい、芹沼。ちょっと」 「え? 敦、僕がいけなかったんだよ………? 言葉が足りなかったから」 敦は微笑んで僕の頭を撫でた。 「佐々木、呼んだか?」 「なぁ芹沼。誠はオレにとっては弟みたいなもんなんだ。だから、ずっと笑顔でいてもらいたい。付き合うと色々とあると思うが、ちゃんと守ってやって欲しい」 「佐々木は誠の兄ちゃんか。反対されなくて良かった。誠のことは全身全霊で守るって約束する。俺だっていつも笑顔でいて欲しいからな」 「ヒロくん………」 うわあ、カッコいいなぁ。 僕のこと守るって宣言してくれるなんて嬉しい! 「誠も芹沼のことしか見えてないし。あ、誠?」 「何?」 「芹沼と潤一のことで思うことがあるなら、今言いなよ」 モヤモヤするの敦には分かっちゃったんだね。 「え? ジュンと俺のこと?」 「あのね、2人が仲良いことは分かってるの。でもこの辺がね、モヤモヤするの」 胸の辺りに手を置く。 「ジュンは殆ど一緒に育ったから、本当の兄弟みたいなもんだよ?」 「そうそう、2人に嫉妬しても仕様がないとオレも思ってる」 「敦も?」 「そりゃあね、芹沼は潤一が笑顔を見せる数少ない相手だからさ。でも、潤一の1番はオレだって信じてるから、気にしないよ」 なんか敦がすごく綺麗になった気がする。 「誠はジュンと俺が一緒にいるのは嫌?」 「そんなことはないの。でも、僕も敦みたいにヒロくんの1番がいい」 「誠が1番なのは当たり前だろ?」 ヒロくんが嬉しそうに笑う。 僕も嬉しくなって笑顔になる。 「うん!」 「あー! もう本当に天使だ」 ギューッと抱き締められて、心臓がバクバクとうるさくなる。 ヒロくんの胸に耳を付けるような格好になってるから、ヒロくんの心臓の音が聞こえてくる。 僕と一緒でバクバクいってる。 またお揃いだね。 こうしてると本当にヒロくんと付き合い始めたんだなぁって思う。 ヒロくんが僕から離れて長谷くんの隣に座る。 もうモヤモヤしないの。ヒロくんの1番は僕で、僕の1番はヒロくんだって分かったから。 頭を撫でられてそちらを見ると拓海さんが微笑んでた。 「ちゃんと気持ちを伝えられたんだね」 「うん。拓海さんと話したからこの気持ちに気がついたの。ありがとなの」 「きっと静くんも喜んでるね」 静を見るとまだ苦しそうにしてる。 鈴先生が握るのとは逆の手を握る。 「静、目を覚まして。僕も話したいことがあるんだよ」 僕達が東京に帰る時に一緒に帰れるかな………?

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