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第327話.再会

到着口に明さんと立つと、他のお迎えの人達が明さんにだけ注目するのが分かる。 並ぶと恥ずかしくなるくらいに貧相な体が目立ち、明さんのイケメン度合いが倍増してしまう。 到着口から人が出て来て、森さんはすぐに分かった。 相変わらずスラッとした美人だ。 目が合うと真っ直ぐに俺に向かってきた。 「晴臣、会いたかった」 抱き締められて、視線が集まる。 どこからか『なんであのイケメンとじゃないの?』という声が聞こえてきそうだ。 「みんな見てますから」 「関係ない。晴臣が足りなくて死にそうなの」 気持ちをストレートにぶつけられてくすぐったくなる。 「俺のことは無視か?」 「あ? もう少し晴臣を補給させろって。ちゃんと明の話も聞くから」 久々に森さんの匂いに包まれてどこかホッとする自分がいる。 「また後で補給させてくれな」 耳元で囁かれて小さく頷いた。 物理的にも離れると少し寒く感じた。 「ここから病院まで結構かかるから車の中で話そうか」 「分かった」 俺は2人のボディーガードだと思い、周りに気を配る。 何も起こらないとは思うが、世界的にも有名な森さんが襲われでもしたら大変なことになる。 車に乗り込んでドアを閉めて発車すると、張り詰めていた緊張を解く。 「で、静の状態は?」 「晴臣頼む」 運転に集中したいのだろう。 明さんに頼まれて、俺から静さんの話をする。 「秀明様に拉致されて北海道に連れて来られて、かなり酷い目に遭ったんです。雪の積もる中殆ど裸同然で歩かされたり、湖に入れられたり………」 「それで意識を閉ざしたのか」 「えぇ。そこから目を覚まさなくなりました。でも、意識は回復していたと思うんです。手を握り返してきて、大きな声で話しかければ意思の疎通も出来たので」 静さんの涙や熱に苦しむ姿を思い出す。 「それで、今の状態は?」 「一樹がサファイアの命令時に‪“記憶が戻って、鈴成さんと心の通い合ったキスをしたら、サファイアを使った命令の全てが消える”と言ったらしいんです」 「そうしたら、サファイアの効力が切れる時に起こる現象が静にも起きた……?」 「はい。高熱が出て目を覚ますかと思ったんですが、未だに微熱が続いていて目を覚まさないんです」 周りにいる全員が目を覚まして欲しいと思っているのがプレッシャーにでもなっているのだろうか。 「やはり2ヶ月半前までサファイアを使われてたというのが関係してますか?」 「ちょっと検査をしてみないと分からないが、そこだろうね。まだまだ体内にたくさんのサファイアが残っているだろうから。今回は点滴に混ぜられる薬も持って来たから、試してみよう」 「森。静は目を覚ますか?」 いつもの自信満々の声ではない。 明さんも不安なんだ。 「覚めるだろ。覚ますって信じるのも大切なことだと思うが………?」 「そうだよな。まずは静の顔を見てやってくれよ」 「あぁ、かなり久々だから楽しみだ。あの子が恋をするようになるなんてな」 「驚くよな」 静さんの昔話をしていたら、病院が見えてきた。 森さんが来てくれたことでいい方向に進んで欲しい。 いや、絶対に進むと確信していた。

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