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第329話.理性
誠と一緒に風呂に入る…………
そりゃ、健全な男子高校生だし、好きな子の裸は見たいと思う。
裸を見て下半身を変化させずにいられる自信がないのが1番の問題だ。
心を無にして修行僧のように煩悩を消し去らないといけない。そう思いながら好きな子の裸を見て煩悩を消しされる訳がないとも思う。
旅館に着いて『お風呂〜♪』と楽しそうな誠と少し距離をとる。
「ヒロ、お前河上と一緒に風呂とか大丈夫か?!」
「ダメだと思う。下半身を変化させない自信が全くない」
「ならどうして嫌だって言わなかった?」
「佐々木! あんな曇りのない目で上目遣いに“嫌なの?”って聞かれて、嫌だなんて言えるかよ」
佐々木は1つため息をつくと小さな声で釘を刺してくる。
「とにかく、誠は性の知識が欠落してるから、襲ったりしないこと! 分かったな?」
「俺には襲えるだけの知識がないよ。誠と付き合えると思ってなかったからまだ何も調べてないんだ」
これから色々と調べて、回りには左右されずにゆっくりと進めていきたいと思っていたから、一緒に風呂に入るなんてかなり先の出来事の予定だった。
「オレは誠のそばにいる。芹沼のことは潤一、頼むよ?」
「分かった」
佐々木は先を行く誠を追って走って行ってしまった。
「なんかごめんな、ジュン」
「何が?」
「佐々木と一緒にいたいだろ?」
「そんなこと気にすんな」
相変わらずジュンは優しい。
俺が来たことで部屋は誠と佐々木、ジュンと俺となった。
佐々木と2人だけの時間が殆ど無くなったというのに、ジュンは俺を責めることもない。
着替えを持って大浴場へ向かう。
誠達の部屋に寄ったがもういなかったので、先に行ったのだろう。
脱衣所にはもう誠の姿も佐々木の姿もなかった。
先に入っているのかな……?
「悩める青年」
「え?! 明さん?!」
「あの危機管理能力皆無の誠くんと付き合うのは、大変だな」
鍛えられた無駄のない身体をした明さん。
男として憧れる。
「覚悟の上ですから」
「なら裸を見るくらいで悩んでいてはいけないよ」
ニヤリと笑う明さんが何を考えているのかが分からない。
「明さん、こいつこんな顔して童貞なんですよ」
「ジュン!?」
「………マジか。なるほどね。相談ならいつでも乗ってやるよ」
頭をポンポンとされる。
ジュンにされるより安心する。
「ありがとうございます」
「いや?」
「ヒロくん!!! 遅いよー」
全身が濡れた状態の誠が脱衣所に入って来た。
「誠」
目に飛び込んできたのはムチムチした体とピンク色の乳首にピンク色の小さめの男のシンボル。
もうこちらも全裸にはなっていたが、心の準備が出来ていなかった俺は鼻血が出そうになる。
「ヒロくんの腹筋かたいね」
お腹を触られてどうしていいか分からなくなる。
下半身にタオルを巻いていたことがせめてもの救いだった。
手を引かれたと思ったら誠のお腹に当てられる。
「僕はかたくないねー」
ぷにぷにした感触。思わずむにむにと揉んでしまう。
「くすぐったいよ」
キャハハと笑う誠に俺の理性が削られていく。
両肩にポンと手が置かれて我に返る。
「ヒロ」
「青年」
明さんとジュンの声に誠から手を離す。
「誠、俺達は体を洗ってから行くから、佐々木と先に風呂に入っててくれるか?」
「はーい。すぐ来てね!」
脱衣所から誠がいなくなってハーっと息を吐く。
前途多難だ!!!
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