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第332話.知り合い

お風呂と食事を終わらせて、明の運転で晴臣と鈴成くんと俺は病院に戻った。 病室に入るとちょうど先生が診に来ていた。 「あなたが静の主治医ですか?」 「えぇ、そうですが………あなたは?」 「あの、今泉先生。この方が先程お話した、サファイアの研究をされてる」 拓海が俺のことを先生に紹介してくれた。 「あなたが」 「初めまして。有馬と申します。今泉先生、静のことでお話があります。出来れば2人で話をしたいのですが」 「では、会議室を使いましょう」 今泉先生と一緒に病室を出ようとしたら晴臣に引き止められた。 「森さん?」 「薬のことと、検査のことを話してくるだけだから。晴臣と鈴成くんはここで待っててくれるか?」 そこまで単純では無いが、変な心配をさせなくてもいいだろう。 「分かりました。お願いしますね」 「待ってますので」 「よろしく頼むな」 「お願いします」 「お願いします」 明と拓海と吾妻にまでお願いをされて、送り出された。 会議室に入って今泉先生と向かい合わせに座る。 「おい、知らないふりって何なんだ?」 「それはこっちのセリフだ。初めまして、有馬と申しますって、笑いそうになったよ」 「まさかこんな再会の仕方するなんてな」 ガッチリと握手を交わす。 今泉雅史(いまいずみ まさし)は昔の知り合いだった。 海外の職場の近くにあるBARで知り合った日本人。 雅史は職場の近くの国際的にも有名な病院に勤務をしていた。 変な誤解はしないで欲しい。 別に付き合っていたとか、そういうことは一切ない。 大体全く好みではない。 「なあ、雅史から見て静の状態はどうだ?」 「目を覚ます準備は整ってる。あとはあの子次第だろうな。性的虐待を受けていたようだからそこなんじゃないかな?」 性的虐待か………秀明おじさんに毎日抱かれてたって聞いてる。 こっちに連れてこられてからは湖に裸で入れられていたらしい。 きっと精神的にも肉体的にも限界だったんだろう。 「サファイアを体の外に出す薬を持ってきた。静に使いたい。使うに当たって今の静の体に残るサファイアの量を知りたくて、この後検査をしてもいいだろうか?」 「検査? どんな?」 ま、聞かれるよな。 「サファイアが生殖器に蓄積されるっていうのは知ってるか?」 「地迫先生から聞いたよ」 「1番簡単に調べられるのは精液だ。採取してすぐに検査できれば結構正確に測定できる。あとは尿道から試薬を流し入れてエコーで見る検査がある。結構辛い検査になるが、一番正確に測定できるのはエコー検査だな。出来れば今夜2つの検査をしたい」 知り合いだったということもあって、話はトントン拍子に進んでいく。 「どちらの検査も俺の立ち会いの元であれば問題ないよ。サファイアのことについては俺も思うところがあるから」 雅史は視線を下に落とす。 「確か出会った頃にお前が担当していた患者も、サファイアの被害者だったよな?」 「あぁ。あの子は子供を産めない身体になってしまったと嘆いて自殺した。もう、そんな悲しいことを繰り返したくない。お前が開発した薬を使えば。子供を産める身体に戻ると聞いたが?」 「もう少し改良は必要だと思うが、必ずそうなる様に完成させる」 静以外の拉致被害者はもう投薬を始めていて、順調に体内のサファイアの濃度が下がってきている。 目が見えるようになっていた3人はこちらに来る前日の段階で視力は元に戻っていた。 見える風景も我々と変わらなくなっている。 「検査だが、精液の採取はどうするんだ?」 「そこは恋人である鈴成くんに頼むことにしてる。エコー検査は俺ら2人だけの方がいいかもな」 会議室を出てもあれやこれやと意見を交わしながら病室まで歩く。 「俺らが知り合いなのは言ってもいいよな?」 「もちろん」 一応病室に入る前に確認を取った。

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