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第334話.検査について
「鈴成くん、さっき言った事なんだけど、無理にとは言わないから」
「俺がしなかったら森さんがするってことですよね?」
「2つの検査をするって言っただろ?」
森さんは俺に静の精液の採取を頼んできた。
はっきり言ってしまえば、今の静は俺に触られることをよしとはしない気がする。
動けないことをいいことに手を出すようで気が進まない。
でもだからといって、他の人にそれをされるのはもっと嫌だ。
「そうですね。精液の検査とエコー検査でしたっけ?」
「うん。精液の検査は文字通り、精液の中にどれだけサファイアが入っているのか、その濃度をしらべるもの。エコー検査はサファイアに反応してエコー検査すると、サファイアが蓄積されている場所が分かるんだ。その色の濃さから量も分かる」
「エコー検査の方が精密ってことですか?」
「そうなるね。ただ問題は試薬の注入は尿道を通すから違和感はハンパないし、人によっては痛みを伴うこともあるんだ」
確かに聞いただけで痛そうだし、辛そうだ。
「1度目で上手くエコー検査までいかないこともある。だから精液の検査も重要なんだ」
「エコー検査が無理なら精液の検査の順は無理ですか?」
「それは無理だね。試薬を少しでも入れた状態では上手く検査ができないからな」
「分かりました。採取をします」
森さんは小さな蓋付きの容器を差し出してきた。
それをそのまま受け取る。
「採取はその容器に。本来なら素手でするんだろうけど、サファイアの濃度が高い場合、鈴成くんもサファイアを身体に取り込んでしまう可能性がある。だから、この手袋をして採取をして欲しい」
直に触ることも出来ないのかと思うと本気で悲しくなる。
静にはちゃんと説明をして、声をかけながらすれば少しは落ち着いてくれるだろうか………?
「分かりました」
手袋も受け取ると、今泉先生と晴臣さんは病室を出て行った。
森さんは扉の前で立ち止まると振り返った。
「鈴成くんのペースでいいよ。こちらはこちらで検査の準備をして待ってるから。病室を出た所に晴臣にいてもらうから、取れたらなるべく早くその容器を晴臣に渡して欲しい」
段取りは単純だった。
「時間がかかると思います」
「焦らなくて大丈夫。静がリラックスした状態でないと出るものも出ないからね」
「ありがとうございます」
森さんも出て行って静と2人きりになった。
「静、話は聞こえていたかな?」
手を握って声をかけるが苦しそうにはふはふと息を忙しなくすることに変わりはない。
もしかしたら俺の声も聞こえていないかもしれない。
「少しだけ触っても大丈夫?」
もちろん今回も返事はない。
分かっているが聞こえている可能性も捨て切れないから、声をかけ続ける。
「嫌だって思ったら教えてくれな。すぐにやめるから。それと、いきなりそこを触ろうとは思って無いから安心してくれ」
静の頭を撫でて、そのまま耳を触る。
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