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第335話.採取ではなく愛撫
「静、静、静」
名前を呼んで抱き締める。
何度呼んでも呼び足りないし、抱き締めているのに腕の中にいるのが本当に静なのか何度も確かめてしまう。
ベッドは介護用のものだから、操作して座っている態勢にする。
頬を触って首も触る。
首にはネックレスがあって、指輪が揺れる。
自分が渡した指輪とは似ても似つかないが、アヤメさんが見せてくれたデザインのもので、上手くいけば加工を剥がして渡した指輪に戻せるだろう。
この指輪は役に立ったのだろうか………?
少しでも静の心の拠り所になっただろうか?
静も男なのだからきっと刺激をすれば精液の採取はすぐに終わるだろう。
でも、そんな心のない行為はしたくなかった。
大好きだから、静を助けたい、いや、目を覚まして欲しい、そんな思いをちゃんと伝えたい。
「静、体を見せてもらうよ」
パジャマのボタンを外すと白い肌があらわになる。
胸の突起はあの時のようにピンク色をしている。
あの時と違うのは上から下に一筋傷跡が残っていること。
明さんの父親からナイフで傷付けられた跡だろう。
静の恐怖を思うと泣きたくなる。
「もう怖いことはないから。俺が守る」
そう言いながら静は護身術では師範代で、俺が守るまでもないんじゃないかと思った。
でも俺の気持ちは変わらないから、それを伝えるのは間違いではないだろう。
「体も触るよ。触ってるのは俺だからな」
傷跡を触る。
ピクリと体が動く。
そのまま胸の突起に指を滑らせると僅かに眉根が寄り、イヤイヤと首を振る。
『たす……けて………』
やはり声は届いていないのだろうか。
唇の動きは助けを求めるものだ。
呼吸器を外してキスをした。
俺だと分かる?
この前よりも長めにキスをした。
静の体から力が抜けるのが分かる。
もう一度乳首に触ると、今度は少し力が入ってその後に俺にもたれかかった。
「静、大好きだよ」
耳元で話しかける。
その間も乳首を刺激し続ける。
熱でなのか俺の与える刺激でなのか静ははぁはぁと息が荒い。
本当なら何度もキスをしたいが、その気持ちを押し込めて呼吸器を戻す。
下半身に手を伸ばす。
パジャマの上から触ると、そこが少し反応し始めていることが分かる。
「気持ち良かったんだね。嬉しいよ」
森さんから渡された手袋をする。
パジャマと下着を一緒に脱がせると静のモノはぴょこんと勃ち上がっている。
「素手で触ったらダメだって森さんに言われたんだ。本当ならちゃんと触りたいけど、それはまた今度ね」
勃ち上がったモノを握り込むとクチュリと濡れた音がする。
手を上下に動かす間も静は俺にもたれかかったままだ。
俺の匂いに安心するならそれは嬉しいが、結構恥ずかしい。
あの時もそこまで強い刺激は与えなかった。
同じように触っているが、イく気配がない。
自分ではない誰かに静が開発された事実を突きつけられているようで、悔しさと悲しさがこみ上げてくる。
でも今は自分の気持ちよりも静を気持ちよくすることだけを考えなくちゃいけない。
先程よりも強めに扱くと気持ちがいいのか、ひゅっと息を吸うのが分かる。
その強さで扱くスピードを段々と早くすると、静の呼吸もそれに合わせて浅くなる。
もうそろそろかと思い、蓋を開けて用意した容器を反対の手に持つ。
ぎゅっと腕を触っていた手に力が入ると、俺の手の中の可愛らしいモノからピュッピュッと白濁が飛び出た。
それをなるべくこぼさないように容器に収めると蓋をした。
手袋を外して晴臣さんに渡しに行く。
「すぐに戻るよ」
おでこにキスをして、病室の前に待機していた晴臣さんに容器を手渡した。
「お願いします」
「はい。確かに受け取りました」
静の元に戻ると、俺を探していたのか手が宙をさ迷っている。
段々と動ける範囲も広がってきてるのか?
その手を握ると静は安心したようにベッドに寄りかかった。
「お疲れ様。体を拭くよ」
体を綺麗に拭いてパジャマを着せるとフラットに戻したベッドに寝かせる。
「もう1つ検査があるんだって。頑張ろうな」
精液の検査結果が出たら森さん達がここに来ることになっている。
目の前に横たわる小さな恋人が少しでも楽になればと思う。
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