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第346話.再会
目が覚めたのは病院のベッドの上だった。
カーテンの色が違うから東京の病院に無事に着いたのだと分かる。
北海道の病院では目覚めたこととみんなが待っていてくれたことが、本当に嬉しくてそれしか考えられなかった。
でもゆっくりと考えると、やっぱり自分は汚くてどうしようもなくて、みんなと一緒にいちゃいけないって思う。
例え鈴成さんのように相手がどうしても一緒にいたいと言ってくれても、その思いは変わらない。
1時的に短く切られていた爪も結構伸びてきてる。
久々にその爪を左腕にめり込ませる。
ギリギリと力を入れて引くと血が滲んだ。
何度も何度も爪を立てる。
秀明さんといた時にも思ったけれど、血が流れると汚いものも一緒に流れていくと感じる。
気持ちも落ち着く。
爪を立てることに夢中になり過ぎて、ドアがノックされたことにも気が付かなかった。
「え? シズカ?! お前はまたこんなことをして!」
「え?! サク…さん?」
そうか、そういえばみんなもこの病院に入院してるって拓海さんが言っていた。
「怒るのは後にするよ。シズカ、無事で良かった。数日でも行方不明になったって聞いて。やっぱりお前を1人置いて出て行ったのは間違いだったんじゃないかって思ってた」
サクさんの言葉に首を横に振る。
「あれ…が……最善…の………選択…だった……よ………」
「その、喋り方……?」
「……昔に……戻った…みた…い………」
母さんと父さんが死んでしまった時のようだ。
「辛いことは思い出さなくていい。とにかく目が覚めて良かった。拓海さんを呼ぶよ」
サクさんは何を言っているんだろう………?
「目が…覚めて……?」
「そうだよ、今日は何月何日だと思う?」
「4月……3日…かな………」
「だと思うだろ? でも6月2日なんだ。シズカはまた眠っていたんだよ」
え?! 夢も何も見てなかった。
またみんなに心配かけちゃったんだ。
サクさんが拓海さんに連絡すると、すぐに病室のドアが開いた。
「静くん!」
「拓海…さん……」
「……良かったぁ………現実だよね」
「…心配……かけて…ごめん……なさい……」
拓海さんは今にも泣きそうな顔をして僕を抱き締めた。
「みんなにも連絡するね。明日が土曜日だから賑やかになるね。それはそうと、この傷は何かな?」
「俺が入ってきた時にガリガリ引っ掻いてましたよ」
「ようやく傷跡も綺麗に無くなったのに……後でゆっくりと話そうか」
拓海さんは怒りを隠すことなく接してくる。
それは僕の心を穏やかにする。
「……はい………」
その日の夜には明さん、晴臣さん、吾妻、雨音さん、諒平さん、風間先生が来てくれた。
みんな僕が目を覚ましたことを喜んでくれた。
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