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第347話.来夢
✳︎くぼ様、リクエストありがとうございます
まだ学校見学の時に見かけたカッコイイ先輩が見つからない。
全寮制なんだから絶対にどこかにいるはずなんだよね。
僕は見た目が可愛いから寮に入ってからも沢山の人に話しかけられた。
でも僕に釣り合うのはあのサッカー部の先輩だけ。
告白して付き合ってみんなに自慢するんだ。
僕から告白して付き合わないなんて選択肢ある訳ないよね。
いつばったり会うか分からないから、1日に何回も鏡の前に立つ。
学校では制服を着ないといけないけど、今はまだ私服でいられる。
私服は僕の可愛さが引き立つようにふわふわしたものが多い。
談話室に行くと先輩達がソワソワしてる。
「どうかしたんですか?」
「新1年は知らないと思うけど、新2年にはアイドルみたいにモテるのがいるんだ。そいつらが今日帰ってくるみたいで」
アイドルみたいにモテる先輩……?
あの人しかいない!
ようやく会えるんだ。
この格好、変じゃないよね。
「そうなんですね。僕も見てみたいから寮の外に出てみようかな」
「あいつらは4人でいるから目立つと思う。サッカー部の芹沼はこの第2寮の生徒で、後の3人は第1寮なんだ。本当はもう1人いるんだけど休学しているんだよ」
先輩はもう1人の休学しているって先輩を思い出しているのか少し上を向く。
寮の外に出ようとしたら同じタイミングで扉が開いて入ってこようとした人とぶつかってしまった。
「……キャッ………」
「…おっと、大丈夫?」
抱きとめられた状態で、そのまま見上げると会いたいと思っていた先輩がそこにいた。
カッコイイ!!!
「あのっ」
「ヒロくん!」
僕の言葉には気が付かなかったのか、先輩は僕に少し微笑んで頭を撫でると声がした方に振り返ってしまった。
「誠、どうした?」
その声は愛しい人に対するもので、その人のことが好きなんだろうって分かる。
でも僕は諦めない。
男を好きになる人なら僕にも可能性はあるってことだもん。
相手を見て驚く。
「え? 誠先輩?!」
「んー? あれ? 来夢くんだ! え、え? 来夢くん、新入生?」
「誠、知り合い?」
「中学の時も後輩だった、有栖川来夢 くん」
「そうなんだ。よろしくね」
向けられた笑顔にキュンとする。
相手が誠先輩なら、奪うのも時間の問題かな………?
「誠ー! あ? 来夢?」
「え? 敦先輩もいる」
敦先輩もいるなんて、色々と面倒だなぁ。
でも寮は僕と一緒なんだ。寮では僕のしたい放題だよね。
僕の恋人は先輩しか考えられない。
誠先輩、覚悟してね。
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