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第356話.心配しかない

来夢くんと話をしたらなんだかホッとした。 でもやっぱりヒロくんの顔は見たくて、グラウンドに向かう。 グラウンドに着くまでに時間がかかってしまったから、着いた時にはもう全体練習が始まっていた。 みんなでストレッチをしている。 サッカー部は部員が多いけど、ひと目でヒロくんがどこにいるのか分かった。 昨日はあんなに会えないって思ってたのに、今は本当なら駆け寄って抱き着きたいくらいなの。 「声かけなくていいんですか?」 「練習の邪魔は出来ないよ。後でお昼頃に電話するから」 日曜日のデート、行くって言わなきゃ 「それじゃ、行こうか。来夢くんも僕も着替えた方がいいよね? 転んじゃったし」 「そうですね。………あ、もしヒロ先輩に選んでもらった服があったらそれを着てきて下さいね」 「ん??? うん。分かった」 今来てるのは自分が選んで買ったものだけど、それが分かってるの? だとしたら、来夢くんは凄いなぁ お互いに寮に帰って着替えたら守衛さんの所で待ち合わせすることにした。 部屋のクローゼットにはヒロくんが選んでくれた服がたくさんかけられてる。 どれにしようか悩んだ結果、紺のハーフパンツにパステルカラーのふんわりとしたカットソー。水色で爽やかだって思ったの。 それにいつもの白いリュックを背負う。 青いクマさんの防犯ブザーは今でも付けたままだ。 部屋を出たところで敦に会った。 「誠? 出かけるのか? 1人だと危ないからダメだよ」 「1人じゃないよ。来夢くんとお買い物に行くの」 「はあ?! 昨日あれだけ泣かされたのにか?」 「仲直りしたの。ヒロくんとキスして無いって教えてくれたし………」 「簡単に信用したら、また誠が泣くことになるんだぞ?」 敦は来夢くんの予想通り、仲良くするのには反対みたいだ。 「簡単じゃないもん! ちゃんとお話ししたの! 誰が反対しても僕は来夢くんと仲良くするんだからね!!!」 「あっ! 待て! あぁ、もうあいつは………オレも今日は家に帰らなきゃいけないし、潤一も部活だしなぁ………だいたい誠と来夢が2人で出かけるなんてナンパの嵐で前に進めなくなりそうだし、拉致られそうだよ………どうする? 誰に連絡すればいい?」 僕が敦から逃げるように待ち合わせ場所に向かう間に、敦は僕達を守ってくれる人に電話をかけていた。 「来夢くん! ごめんね、待った?」 「誠先輩、可愛いです! すごく似合ってる。僕もそのブランド好きなんですよ。今日はそのお店にも行きましょう! 明日のデートの服は僕が選びますね」 「可愛いのは来夢くんだよ! ピンクなんて僕には似合わないから」 来夢くんはふわふわのシフォンワンピースのミニにマイクロミニの短パンを合わせてる。ワンピースがピンクで短パンは黒。 たまにチラリとみえる短パンにドキッとしてしまう。 少し長めの髪の毛もシュシュで束ねていて、女の子にしか見えない。 「今日はくんて呼ばない方がいい? 来夢ちゃんにする? その方がいいよね」 「好きに呼んで下さい。じゃあ行きましょう」 守衛さんに学生証を見せて外出の所に名前を書くと2人で『行ってきます』と挨拶をして学校を出た。 ヒロくんでも敦でもない人と出かけるのは殆ど初めてで、なんだかワクワクする。 どちらからともなく手を繋いでバス停まで歩く。 目的の駅に着いた時には、敦が電話をした相手がもういたのだが、僕は来夢くんとの会話に夢中で全く気が付かなかった。

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