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第358話.2人の天使
✳︎時間経過に注意
スマホに連絡が入ったのは静さんの病室だった。
「はい」
『晴臣さん? 敦です。ちょっとお願いがありまして』
敦さんは慌てた様子だった。
「どうされたんですか?」
『誠と後輩が2人で買い物に行くと出かけてしまって。この後輩が誠よりも小さくて、誠と同じ位可愛いんです』
「なるほど、ボディガードの依頼ですね?」
誠さんだけでも危なっかしいのだ。敦さんも気が気ではないのだろう。
『そうなんです。オレも潤一も行けないので……願いできますか?』
「もちろん。どこに向かったかは分かりますか?」
『誠はすぐにはぐれるので、追跡アプリを携帯に入れてて、オレのスマホから位置が分かるようになってます。ただ、買い物はいつもの店に行くと思うので●〇◆駅だと思います』
「分かりました。●〇◆駅に向かうのでもし違う駅に向かうようならまたJOINで連絡して下さい」
『そうします。すいませんがお願いします』
「いえ、頼って頂けて嬉しいですよ」
何度もお礼を言う敦さんを宥めて通話を切る。
「晴臣? ボディガードってどういう事だ?」
一緒に病室にいた明さんに事情を説明すると、●〇◆駅まで車で一緒に行くことになった。
また目を覚まさなくなってしまった静さんも気になるが、拓海さんも咲弥も他の子達も来てくれるから、病室はいつも賑やかだ。
それに静さんも誠さんが心配だろう。
「行ってきますね」
話しかけるが反応はない。釧路の病院では確かに目を覚まし声まで発していたのに、それが幻だったのではないかと思ってしまう。
今は敦さんの依頼に集中だと顔をパンっと叩く。
「明さん、行きましょう」
「ん」
明さんには俺の気持ちなんてお見通しなんだろう。
髪の毛をクシャリとされ、見上げると微笑まれた。
●〇◆駅の駅ビルの駐車場に車を停めて駅の改札口に向かう。
敦さんのJOINによれば、ほぼ間違いなくここに来るだろうということだった。
改札口が見える少し離れたところに立つ。
相変わらず明さんは目立つな。
しばらくすると誠さんが改札口から出てきた。
一緒にいるのが後輩なのだろうが………女の子?!
いや、聖凛高等学校は男子校だから、男の子?!
それにしてもあの2人は可愛くて周りからも注目の的だ。
「可愛いですね。本当に高校生………?」
「あれは、心配になるな………ん? 晴臣あれ、ヤバくないか?」
周りを見てみればニヤニヤした男の集団が2人に近付いていく。
「ヤバいですね。もっと近くにいた方が良かったかな。行きましょう」
近付く間に誠さんは腕を掴まれ、もう1人の子は誠さんに押されて走って逃げた。
直ぐに3人が追う。
「明さん、俺は親玉である誠さんの腕を掴んでいる奴を制圧します。あとの雑魚と後輩君をお願いします」
「了解」
明さんは今までに色々な体術を会得しているので、人数が多くても問題ないだろう。
「静さんの大切なお友達に何をしているんです? 腕、折りますよ」
怒りを抑えようにもおさまらず、声はいつもよりもかなり低かった。
誠さんを掴んでいる人の腕を掴み、抵抗される間を与えずに軽く投げ飛ばし、そのまま馬乗りになって腕をきめた。
「あっ! 来夢くんは?」
「大丈夫ですよ。あちらには明さんが行きましたから。で、どうします? 少し動かせば簡単に折れますけど」
「何もされてないから大丈夫なの。離してあげて……? 本当は晴臣さんも傷つけたくないでしょ? 心が苦しいって言ってる」
本当に誠さんと静さんはよく似ている。
言われた言葉に嬉しくなり腕を離して立ち上がる。
「やられっぱなしでいられるかよ!」
襲いかかると宣言するように声を荒らげるバカのパンチは蚊が止まるほどゆっくりで、かわしながら回し蹴りを首の辺りに入れるとそのまま地面に寝そべった形になる。
「何も出来ないように、やっぱり腕を折っておきましょうかねぇ」
「ヒィっ」
「晴臣さん」
男に近づいて行くと誠さんに呼ばれて首を横に振られてしまった。
誠さんに諌められたらやめる他ない。
「お兄さん、お友達を連れて行ってください。さようなら」
男は蹴られた首をさすりながら仲間の元に小走りで行く。
あちらはあちらで明さんにコテンパンにやられ、のびている。
怖くて腰が抜けたのか明さんは足を持って男の子を抱き上げてこちらにやってきた。
「来夢くん! 何もされなかった? 無事?」
「誠……先輩………!」
我に返ったのか大粒の涙を目に溜めて、明さんに下ろされると誠さんに抱き着く。
「怖かったね」
よしよしと頭を撫でるこの光景が可愛すぎてお花が舞っているように見える。
「先輩、、も、無事?」
「うん。2人が助けてくれたからね」
「いえ、もう少し近くにいればもっと早く助けられました。嫌な思いをしなくて済みましたよ」
待機した場所を間違えたと思った。
「敦に頼まれたの?」
「すごく心配してたよ」
誠さんは少し考えるように上を見てから男の子と目を合わせる。
「そっか。怖いことあったし、もう学校に戻る?」
「やです。お買い物行きましょう?」
誠さんも後輩の言うことには弱いのか、頷いた。
「俺達も少し離れてついてるから安心していいよ」
「「うん」」
明さんの言葉に2人は笑顔になって、手を繋ぐと歩き始めた。
本当に可愛い!
天使が2人いる………
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