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第359話.苦手な人

明さんと晴臣さんもお店の中にって言ったけど、若い子のお店は居心地が悪いから外で待ってると言われてしまった。 「いらっしゃいませ〜、あら? 今日はいつもの子と一緒じゃないのね」 「あ、マキノさん。こんにちは」 マキノさんはこのお店の店長さんで、いつも相談させてもらってるの。 「はい、こんにちは。あら? あなたもよく来てくれる子よね? 知り合いだったの?」 「うん。友達だよ」 「先輩?!」 そっか、このブランド好きだって言ってたもんね。 「先輩って………同い年じゃないんだ」 「マキノさん! 僕は高2で来夢くんは新入生の高1だよ」 「何度聞いても誠くんが高校生って信じられないわぁ。それにその子まで高校生だなんて」 むーっ! それって子供っぽいって事だよね?! 「ほら、そんな顔しないで服を見て。今日、新作が入ったのよ」 「え? わっ本当だ。来夢くんも一緒に見よう」 「はい」 そういえばあまり来夢くんが話しをしない気がする。 お店に入ってから………? 「マキノさん、まずは2人で選ぶから。また後でね」 来夢くんが少しホッとしたように見える。 マキノさんは苦手かな? 「サイズとかはすぐに言ってね」 「はーい」 マキノさんが離れたら小さい声で話す。 「来夢くん、マキノさん苦手? 楽しくないなら来夢くんの行きたいお店に行こう?」 「でも……大丈夫です」 「無理しないで。ここはまたヒロくんと来るから、ね?」 来夢くんは小さく頷いた。 「先に外に出て明さんと晴臣さんと一緒にいて。すぐに行くから」 「ごめんなさい」 「大丈夫」 来夢くんが外に出て明さんと晴臣さんと話しているのを確認してから、マキノさんのところに行く。 「マキノさん、明日また来ますね」 「あら、じゃあ誠くんのサイズの新作を取り置きしておくね」 「ありがとうございます。じゃあまた」 マキノさんが外にいる来夢くんを見て舌打ちをしたのは僕が外に出た後だったから知る由もなかった。 時間は11時を少し過ぎたあたり。 「僕がいつも行くランチも出来るカフェがあるんですけど、すぐ近くなので行きませんか?」 いつもの笑顔が戻った来夢くんにホッとして、ブンブンと頷く。 「行こう!」 「隠れ家みたいなんですよ」 歩いて行くと晴臣さんが来夢くんに話しかけた。 「もしかして喫茶Rainです?」 「知ってるんですか?!」 「あー、兄の店なんだ」 「えぇ?! あ、でも優しい雰囲気とか似てるかも」 すごく嫌そうな晴臣さんの顔を見て来夢くんはクスクス笑う。 「誠くん? あの子がどうかした?」 「さっきお店で店長さんに会いたくなかったみたいで……でも元気になってくれてよかった」 今楽しそうにしている来夢くんは、僕の知ってる顔をしている。 「誠くんも後輩の前だとちゃんと先輩なんだな」 「え? んん? 明さん、今僕のことバカにしました?」 「いや? 偉いなって褒めたんだよ」 「へへへ。ありがとう」 お礼を言ったら明さんは頭を撫でてくれた。 晴臣さんのお兄さんの喫茶店は本当に隠れ家みたいで、僕だったら絶対に見つけられなかったと思う。 店内に入ると木の香りとランチの準備をしているのか美味しそうな香りが充満していた。 「いらっしゃいませ、来夢くん、いつもの席空いてるよ」 先頭にいた来夢くんからどんどん後ろを見て、店長さんは驚いてた。 「なんで晴臣と明さんが?! それと、その子は………拓海さんに似てますけど隠し子とかじゃないですよね?」 「僕? 拓海さんは大好きだけど違うよ。僕は静と友達なんだ」 「雨音さん、味見して」 「やっぱり一樹もいると思った」 晴臣さんの言葉で、店長さんと吾妻さんが付き合っているってことを思い出した。 「ランチプレートは11時45分にならないと無理なので、明さんと晴臣にはコーヒーを、2人にはジュースを出しますね。座ってゆっくりして下さい」 ランチの後に聞いた来夢くんの話は胸が痛くなるものだった。

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