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第366話.可愛いとかっこいい
「こっちだよ。拓海さんもいるかな」
「そうそう、拓海さんが学校辞めてて驚いたんだ。でもそうだよね。お医者さんだから」
「たくみさん? 誰?」
誠に手を引かれたハル先生と来夢。
静のお見舞いに一緒に行くと駄々をこねたのは誠だ。
来夢は知らない人だからと何度も言ったが『会わせたいの!』と言ってきかない。
知らない人がいることで静がストレスを受けなければいいけど。
それより拓海さんの説明を2人はするつもりは無いらしい。
「来夢、拓海さんは鈴先生のお兄さんで心療内科のお医者さんだよ。元々これから会う静の主治医だったんだ」
「鈴先生のお兄さん………?」
「会うとわかるけど鈴先生とはあまり似てないよ。どちらかと言うと誠に似てる、雰囲気がね」
「え? 誠先輩に?!」
色々と結びつかないようで、来夢は混乱してる。
「病室にいなかったとしても、会って帰ればいいよ。オレが連絡してみるから」
「敦先輩。ありがとうございます」
来夢は中学の時に感じていたような、嫌な子では無かった。
たぶん周りからの変な噂にオレも踊らされていたんだろう。
今も笑顔を向ける来夢は可愛いと思ってる。
誠にするように来夢の頭を撫でようと手を伸ばすと肩をすくめるようにするから、まだオレのことを怖いと思っているのだろう。
それでも気にせずに頭を撫でたら信じられないものでも見るように見上げてきて、顔を真っ赤にした。
「敦先輩?」
「ん?」
「僕嬉しいです。誠先輩みたく敦先輩に頭撫でて欲しいって思ってたので」
「え?」
まさか来夢がそんなことを考えてるとは思ってなかった。
オレのことは苦手で怖い存在なんだと思ってたから。
「あ………ごめんなさい」
「何で謝るんだ?」
「だって……僕は誠先輩みたく可愛くないから。そんなことを言っちゃダメですよね」
「誠は可愛いな。昔からそう思ってるよ。で、来夢も可愛いよ。比べるのは馬鹿らしいだろ? 2人とも可愛いでいいだろ」
自分の可愛いの基準を超えれば誰でも可愛いとなるんだろう。
「え? 敦って僕のこと可愛いって思ってたの?!」
誠が心底驚いたって顔で見てくる。
何だよ。ハル先生とのおしゃべりに夢中だっんじゃないのかよ。
「今更何を………オレは誠も静も来夢も、もちろんハル先生も可愛いって思ってるよ」
「うわぁ………久々に会った時にも思ったけど、敦くんかっこよくなったよね! 実習の時はまだ可愛いだけだったのに、今はかっこいいが7割で可愛いが3割って感じ」
背は伸びたけど、そんな風に改めて言われると照れくさい。
「ほら、静の病室に着いたから。この話はおしまい」
何か言われる前に扉をノックした。
「はい、どうぞ」
扉を開けたら思った通り拓海さんがいた。
明さんも晴臣さんもいてそこに、オレと誠と来夢とハル先生、それに潤一と芹沼も一緒に来たから急に賑やかになったと思う。
静、うるさいって起きていいんだからな!
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