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第367話.成長

昨日の夜に敦くんからJOIN電話がかかってきた。 「もしもし、敦くん?」 『良かった、繋がって。今電話大丈夫ですか? 仕事中ならかけ直しますけど』 「今日は早番で、もう家に帰ってるから大丈夫だよ。何かあったの?」 敦くんは気配りの出来るいい子だ。 『明日なんですけど、静のお見舞いに行こうと思っていて……』 「そう。まだ目が覚めなくてね。本当なら今日もそばに付いていようかと思ったんだけど、晴臣さんがちゃんと帰って休めって言うから」 僕としては晴臣さんの体調も心配なんだけど、ボディガードの時の癖で元々深い眠りにつくことがほとんど無いらしい。 だからどこで寝ても関係ないと言われてしまった。 『あの、結構な大人数で行くことになりそうなんですけど、大丈夫ですか?』 「え? 敦くんと誠くんと長谷くんと芹沼くんの4人じゃないの?」 『ハル先生が教師として学校に戻ってきて、一緒にって。あと、静は会ったことが無いんですが、オレと誠の中学からの後輩が新入生で入ってきて……誠がどうしても一緒に行くと言ってきかなくて』 ハルくんは静くんも喜ぶだろうな。 問題は会ったことのない子か………でも誠くんがどうしてもって言うのなら誰も止められないよね。 「明日は僕も静くんに付いていられると思うし、明さんも1日いるって言ってたから大丈夫だよ。もし何かあったら病室を出ていってもらうこともあるかも知れないってことだけ覚えておいて」 『分かりました。すみません、我儘を言って』 「釧路でも言ったけど、僕は敦くんのこと息子だって思ってるから。我儘を言ってくれる方が嬉しいよ」 敦くんはどんどん成長して可愛いというよりも綺麗になってきてる。 学校でもモテて大変だろうなぁ 敦くんと誠くんと芹沼くんと長谷くんは有名な4人組になってる。 本当なら静くんもそこに入って5人組の筈なのに……… 『じゃあ、我儘を聞いてください。その後輩は来夢っていうんですけど、家のことで色々と悩んでるみたいで……話しをしてあげて欲しいんです』 「そっか。有栖川の子が来るんだね。明さんから話は聞いてるよ。僕で力になれるのなら」 『良かった! オレも家族に振りまわされたから、逆らえない気持ちとか分かるけど……何て声をかければいいのか分からなくて』 助けてあげたいって気持ちばかりが先行して、どうしたらいいか分からなくなる。 きっと敦くんはそんな状態なんだろう。 「そういう気持ちは伝わるよ。敦くんの優しさにその子も救われてると思う。また弟が増えたって思ってるんだよね?」 『あー、分かります? 中学の頃は嫌な子だって思ってたんですが、それって表面しか見てなかったなぁって。長く一緒にいるようになって来夢がいい子なんだって分かったから……助けてあげたいって思うんです』 「話をするだけでも気持ちが晴れることもあるから、何か抱えてるって思うなら何も言わずに話を聞いてあげるといいよ」 明日来夢くんに会うの楽しみになってきたなぁ 『拓海さん、ありがとうございます。じゃあ、明日また。静に会うの楽しみにしてます』 「うん、また明日ね」 電話を切ってふぅっと息を吐く。 来夢くんのことは明さんから聞いていた。 本人には知られずに事を終わらせたいと言っていたので、詳細を敦くんに言うわけにはいかない。 夏休み前に来夢くんの許嫁である西園寺靖さんを社会的に抹殺すると言っていたのだが、それに関しては僕も賛成だ。 家の力で揉み消されているけど、西園寺さんにイタズラをされて傷ついた子を何人も診察している。 つい最近もいたことを考えると、来夢くんの貞操も危ういということだ。 なるべく早く魔の手が来夢くんにかかる前に、そう願って止まないが妙な胸騒ぎがする。 この胸騒ぎが杞憂に終わればいいのだけれど………

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