388 / 489

第384話.元に戻る

退院が具体的にいつになるのかはまだ決まっていない。 リハビリの進み具合と、サファイアの排出のための薬の量をみて決めるらしい。 薬は点滴から飲み薬に変更になっていて、体内に残るサファイアの量も確実に減ってきていることが分かっている。 高校生組と諒平さんと風間先生は帰った。 病室には鈴成さんと明さんと拓海さんの3人が残っている。 「疲れたんじゃない? 大丈夫?」 「大丈夫、です。これでも、体力はついて、きたので。……あ、明さん」 「ん? どうかしたのか?」 拓海さんの後ろから明さんが僕を見てきた。 「来夢くん、なんだけど、夏休みに、鎌倉の、別荘に行く、みたいだよ」 「鎌倉? 西園寺の別荘のリストに鎌倉なんてあったか?」 明さんの様子だとリストには、載っていないみたいだ。 「だったら、葉山は? 来夢くんには、分かりやすい、ように、鎌倉って、言ったの、かも」 「葉山ならある。そうか、ここか」 「助け、られそう?」 「準備は進めているが、ギリギリになりそうだ」 明さんは苦々しい顔をする。 1人の人を再起不能にするのと家ごと葬り去るのとでは、しなければならないことの量が違い過ぎる。 「お願い。あんな思いは、誰にも、して欲しく、、ない」 ギュッと手を握ると、鈴成さんが手を重ねる。 その手に縋ってもいいのかな………? 「言われなくても絶対に助けるよ。晴臣にも動いてもらってるし、もう1人、あの子を助けたいってヤツがいるから」 「あの、時間が、ないのは、わかってる、けど、、出来たら、CLASSYの、ジュエリー、ショップに、一緒に、行って欲しいの」 「俺と? 鈴成くんじゃなくて?」 コクンと頷く。 「教師と生徒が一緒に行く所では無いですから。父兄にでも見られたらなんと弁明すればいいか分からないですし」 鈴成さんも分かってくれてた。 本当は鈴成さんと一緒に行きたいけど、今はその時じゃない。 「分かった。時間を作るのはそこまで大変な事じゃないから。一緒に行こう。……拓海、一時的な外出であればすぐにでも行けるのか?」 「そうですね。明さんが一緒であれば問題ないと思いますよ」 「静、申請を出さないといけないから、明後日行こうか」 「ありが、とう」 指輪が元に戻る、こんなに嬉しいことは無い。 ずっと心の支えだった。形が変わっても何の指輪なのか忘れても、触れることで心は落ち着いた。 それは鈴成さんの気持ちがこもっていたからだと思う。 明さんと拓海さんが出て行って、鈴成さんと2人になった。 「静」 「鈴成さん」 抱き締められて、背中に腕を回す。 胸に顔を埋めると鈴成さんの匂いで包まれる。 落ち着く匂い。 キスをされそうになって慌てて手を挟んだ。 「静? 嫌か?」 「違っ、サファイア、の、影響、が心配、で」 ちゅっと触れるだけのキスをされた。 「森さんに聞いたら、キスは問題ないって。舌を絡めてもいいって」 「え? それは…….」 想像して、それだけでキュンとする。 「してもいい?」 さっきは何も言わずにしてきたのに、今回は聞くの? でも、僕も……したい………。 頷いて目を閉じた。

ともだちにシェアしよう!