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第386話.2人、一緒に
ぷにっとした唇はそれを合わせると気持ちがいい。
夢中で何度もキスをした。
キスをするのを1時中断すると、閉じていた目を開けて見上げられた。
唇は2人の唾液で濡れて光っている。
「静、大好きだよ。もう絶対に離さない」
「……鈴成さん、僕も、大好き、です」
恥ずかしそうに言う姿も可愛いなぁと思って見つめていたら、静の方から触れるだけの可愛らしいキスをされた。
離れていく唇を追って自分のそれで塞ぐ。
静とキスができるのは嬉しいし気持ちがいい。
でも……1年前よりも確実にキスが上手くなっているのはちょっと悲しい。
息継ぎもスムーズだし、絡まる舌の動きも上級者のようだ。
1年間、他の人と身体を重ねていたのだ。何もかもを教え込まれていて当たり前だ。
そう分かっていながらも、相手である明さんの父親を許せない。
下半身の膨らみを触られて思わず静を引きはがす。
「苦しそう、舐めます、か?」
当たり前のように言われた言葉に衝撃を受ける。
「静、そういうことは、もうしなくていいんだよ」
「え? あっ……ごめん、なさい。はしたない、ですね」
きっと拉致されていた間はそんなことを聞く間もなく、口にねじりこまれていたのだろうと思うと、頭が沸騰するほど憤る。
「クソっ」
思わずソファの背もたれを拳で叩く。
「あ…あ……ごめ……なさっ………何でも…するからっ……許し……て」
甘い雰囲気から一転、静は身体を震わせる。
『守る』と約束したのに嫌なことを思い出させるなんて、俺は何をやってるんだ………
「静、ごめん。怒ってないよ。大丈夫」
ふわりと優しく抱きしめて背中をポンポンとする。
「鈴、成、さん……? やっぱり、僕は、汚いから、一緒に、いちゃ、駄目、、だよね……?」
ポロリと目から涙がこぼれ落ちるのを見て、不安の塊になった静を見て、自分の弱さが嫌になる。
「静は昔と変わらず綺麗だよ。俺がもっと強くならないといけないだけだから……」
違う、こんな事が言いたいんじゃない。
「静、ちゃんと聞いて?」
「………はい」
「はっきり言うと、色々とエッチなことは俺が静に教えたかったんだ。それが出来なかったことが悔しい。でも、その事で静を汚いなんて思わない。俺だって静の前に付き合った人だっていたし……」
セックスもした。とはちょっと言いずらい。
「色々なことをしてきた。……起きた出来事はもう無かったことには出来ない。だから2人で乗り越えられたらって思ってる。その為にも嫌なことは嫌だって言って欲しいし、これがしたい! と思えば、それも声に出して欲しい」
「……鈴成、さん………」
「2人で一緒に、これからの人生を歩きたいから」
目尻に溜まった涙を舐める。
「……僕も、鈴成、さんと、歩いて、いきたい、です。また、パニックに、なることも、あると、思いますが……」
「その時は落ち着くまで背中を撫でるよ」
「………はいっ!」
弱々しいが、僅かに口角が上がった。
静が戻って来て初めて笑ってくれた。
嬉しくてこちらまで笑顔になる。
静が安心して笑顔でいられるように努力するから
ずっとずっと一緒にいよう
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