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第391話.2人だけ……じゃなかった

ジュエリーショップで諒平さんとアヤメさんと色々と話してから、雨音さんの喫茶Rainに向かった。 喫茶Rainには拓海さんと晴臣さん、吾妻、風間先生がいた。 「鈴ももうすぐ着くと思うよ」 「森さんもさっき連絡があったので」 「諒はさっきまで一緒にいたけどここにも来るって言ってたよ」 車椅子のまま奥の席に連れて行かれる。 テーブルにはもう料理の準備が始められていた。 「どう、して?」 「ん? みんないるのかって?」 拓海さんに聞かれて頷く。 「明後日から学校ってことは退院するってことでしょ? みんなお祝いをしたいって言ってくれてるんだ」 みんなそれぞれ忙しいのに僕のために集まってくれるなんて、本当に嬉しい。 扉のカランカランという音で誰かが来たのが分かる。 「奥にいますよ」 雨音さんの声の後に見えたのは鈴成さんの姿だった。 真っ直ぐにこちらに来て躊躇うことなく抱き締められた。 「みんな、見てます」 「見せてるの」 「………あの、指輪なんですが……傷ひとつなく、戻って、きました」 鈴成さんが一旦離れると、首から下げた指輪を取り出した。 「もう1つ用意した方がいいかと思ってたけど、大丈夫そうだな」 「え?………もう1つ?」 「うん。元に戻らなかったら、って考えてたよ」 鈴成さんは僕が落ち込んでるかもしれないと、色々考えてくれていたんだ。 病院に戻ってからゆっくりと電話をしようと思っていたから、指輪が無事だと今初めて伝えたけど、さっきすぐに連絡をすれば良かった。 「分かって、すぐに、電話をすれば、良かったですね……ごめん、なさい」 「謝らないでいいよ」 「でも」 「ちゃんと静と会って直接無事だったって聞けて嬉しかったから。気にしなくていいよ」 頭を撫でられてニッコリ笑う鈴成さんを見ると、胸が温かくなる。 「この指輪は、僕にとって、特別、なんです」 指輪を手に握る。 「ずっと、心の支え、だったから……これからも、支えに、なります」 「俺も支えになるよ」 「僕も、鈴成さんの、支えに、なれるかな……?」 「もうなってるよ。静がいるから俺は頑張れるんだ」 嬉しくて泣きたくなる。 「あぁー、もうっ! 2人の世界もいいけど、私達がいること忘れてない?」 諒平さんの声に我に返る。 また鈴成さんしか見えなくなってた………。 「忘れてません。でも静が学校に戻ったら本島くんと呼んで、こうやって触ったりできなくなるので、今だけは許してくださいよ」 僕は……忘れてた。 みんなに変なところ見られちゃった。 「それに、この子だって静ちゃんに会いたかったんじゃないの?」 この子? 恥ずかしいけど諒平さんの方を見るとハル先生がいた。 「ハル、先生?!」 「静くん久し振り」 「どう、して?」 「俺ね、聖凛の教師になったんだ」 夢を実現したってことだよね。しかも聖凛の教師ならたくさん一緒にいられる………! 「おめでとう、ございます! 色々と、迷惑を、かけるとおも、けど、よろしく、お願いします」 ハル先生がそばまで来ると頭を撫でられた。 「ありがとう。明後日からよろしくね」 「はい」 「そろそろご飯にしようか」 雨音さんは美味しそうな料理をたくさん並べ始めた。 サラダなどが置いてあったところに暖かいものが増えて、かなり豪華だ。 「みんな、座りましょう」 結構な人数だ。森さんもいつの間にか来ていて、晴臣さんの隣に座った。 食事は僕の分だけ食べやすいようになっていた。 「雨音さん、ありがとう」 「ん? 食べられそう?」 「はいっ」 病院食より美味しくていつもよりも食べられそうだ。 見回すと大好きな人がいることが嬉しい。 みんな、ありがとう

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