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第398話.ただいま
鈴成さんと一緒に寮に戻った。
部屋に入るともう誠は戻っていたし、敦も来ていた。
「静、おかえりぃ」
「ただいま。誠、敦」
「制服姿の静を見るの、本当に久しぶりだ」
右側から誠、左側から敦に抱き着かれる。
「着替える、から……それと、うさぎ………集め過ぎ。でも、嬉しい」
朝寄った時と変わらず、ベッドの上はうさぎグッズで埋め尽くされている。
「戻って来るって信じてたの。だから色々と買っちゃった」
イタズラっ子のように笑う誠は本当に可愛い。
「でも、これどかさないと静が眠れないよな」
しかも大量だからどこにどう仕舞えばいいのかも、分からない。
「そっか、そうだね……どうしよう」
「ひとまず。ローテーブルを、ベッドと、壁の間に、置いて、並べよう。片付ける、のは、少しずつ、ね」
「小物類はこっちの机の上に置こう。ぬいぐるみとか大きめのものはそこな」
敦がテキパキと動いてくれて助かった。
誠はぬいぐるみを移動させては、コレはどこどこでどうしたなど、説明がくっ付くからなかなか進まない。
それでもなんとかベッドからうさぎ達がいなくなって、眠れる状態になった。
制服から部屋着に着替えてベッドに座る。
「まだ、立つのは難しいのか?」
「うん、ふらつくし、足に力が、入らなくて。でも、毎日、リハビリを、すれば、歩けるように、なるはず」
ベッドに座った状態で足を前に出してキープ。普通なら難なく出来るこの動作も今は辛い。
「お風呂はどうする? シャワーも難しいか? 俺か誠なら手伝っても平気か?」
嬉しい申し出だけど、傷だらけの体を見られるのは恥ずかしい。
「1人で、難しかったら、お願い、しようかな」
「分かった。無理だけはするなよ」
「うん、ありがとう」
あれ? 何か相談があったような………
あっ! そうだ。鈴成さんとの旅行のことだ
「ねぇ、敦、誠。相談が、あるんだ」
「相談? どうしたの?」
「あのね、夏休みの、終わり頃に、鈴成さんと、旅行に、行くことに、なって……周りに、気が付かれない、ように、変装することに、なったんだけど、どうしたら、いいかな?」
「それは簡単なことだな。あー、でも買い物行かないとダメか……オレじゃお店知らないし……あっ! あいつを呼ぶか」
敦はブツブツと言いながら1度出て行き、すぐに戻ってきた。
「敦?」
「来夢が今から来るから」
来夢くん? どうして来夢くんが?
「………変装って鼻眼鏡とかする、あれ?」
うんうん考えた結果、誠の答えはそれだったらしい。
「誠、そんな格好した静が見たいのか?」
「そうじゃないけど、変装とかよく分からない」
「来夢の私服の店、一緒に行ったんだろ? なら分からないか?」
誠は敦を見てから少し上を見て首を傾げる。
「………あっ! 分かったかも」
「鼻眼鏡なんて吹っ飛ぶよな?」
「うんうん! 絶対に可愛いの」
本人である僕だけが分からない。可愛いって何が?
考えても全く分からなくて、敦と誠が『早く見たい』とか『来夢くん、まだかな』とか言っているのを眺めていた。
ピンポーン
敦はインターホンで話すとドアを開けた。
「相変わらず、うさぎがいっぱいいる! 可愛い」
来夢くんはうさぎのぬいぐるみの方に行って、大きいぬいぐるみを抱き締めた。
可愛いのは来夢くんの方だよ……!
「静先輩、退院おめでとうございます。今度女装するんですって? 僕にお手伝いさせて下さい」
「ありがとう………え?! 女装?!」
思わず敦と誠を見ると嬉しそうにニコニコして頷いている。
変装は………女装?!
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