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第399話.似合う色

「静先輩って可愛いからなんでも似合いそうですが、人それぞれに似合う色ってあると思うんです。だから、色々な色の服を持って来ましたので、試してみて欲しいんです」 来夢くんが持って来た紙袋は可愛いロゴマークが入っている。たぶんいつも行くお店の紙袋なんだろう。 「色んな色って言ってもピンクとか黄色とかオレンジが多いな。あとグレーと白か。んーオレは青とか緑とか水色とかの服があるから、持って来ようか?」 「僕も紺とかオフホワイトとか、黄緑とこの前買ったバイオレット…薄紫色がある」 誠のベッドの上が洋服で埋まっていく。 敦も服を持ってきて一緒に並べた。 不思議とどれが誰の服か見ただけで分かる。 人の好みってこんな所にも出るんだなぁ……。 「みんな、ありがとね、僕の為に」 「大変なのは静だぞ? 全部の色試すんだから」 そうだった。端から試すのかな? 「色を見るだけなのでトップスだけでいいですが、着て欲しいんです」 腕の傷はあるけど、タンクトップの下着は着ているから、それ1枚になる。 来夢くんの服が入るか心配だったけど、着てみたらぴったりだった。 「うーん、似合いますが、ちょっと違う気がしますね」 「後で見直せるように写メるか」 「それならデジカメ持ってきたので、これで撮りましょう。ノーパソにSDカードを挿せば隣に並べたりもできますから」 来夢くんは用意がいいなぁ。 写真は苦手だけど、色を見るためだし………自分がお願いしたことだもんね。嫌がる訳にもいかない。 ピンク→オレンジ→黄色→白→水色→青→緑→黄緑→紺→バイオレット→オフホワイトの順に着た。 精神的に疲れた。 グレーはボトムスだったから着なかったけど、スカートみたいで恥ずかしいからちょうど良かった。 ノートパソコンは1人1台学校から支給されている。 変なサイトにアクセス出来ないように制限がかけられているが、普通に使う分には困ることもない。 誠のノートパソコンに今撮った画像を取り込んで、3人が画面をのぞき込む。 「白は間違いないよな。オフホワイトも含めて」 「そうですね。あと、色は……水色ですかね。黄緑も捨て難いですが」 「どの静も可愛いなぁ」 ニコニコ顔で誠がこちらに来て僕の隣に座る。 「いいの? 見なくて」 「服の事はよく分かんないし、来夢くんと敦に任せれば問題ないよ。2人ともセンス良いから」 画面を見る2人は真剣そのもので、まるで仕事をしているようだ。 「服の形とかもあるよなぁ」 「やっぱり買いに行って、ショップのお姉さん方に見てもらうのが1番ですよね。色もあるもの無いものも有りますから」 「期末テストが終わって、夏休み直前の休みにみんなで買い物に行くか」 「そうですね、そうしましょう!」 期末テストが終わった後、結果が出るまで3日の休みが入る。その後結果と終業式があって、夏休みだ。 来夢くんにとっては永遠に来て欲しくない『夏休み』だろうけど………。 きっと明さん達が何とかしてくれるからね! 裏で色々と動いていることは、来夢くんには知られたくないって言ってたから何も言えないけど、夏休みという言葉に一瞬陰を落としたことに気が付いてしまい、こちらの胸が痛くなる。 「静もそれでいいよな?」 「みんなの、時間を、とっちゃう、みたいで……悪いな」 「気にしなくていいと思います。僕も買い物に行きたいし、あのお店の服は敦先輩に似合うのもあると思うので、一緒に行きたかったから」 この1年でかなり背が伸びた敦を来夢くんは見上げた。 「オレ達だけだと心配されそうだから、潤一と芹沼も連れて行くか。試験後の休みは部活禁止だし」 「楽しそうだね!」 僕に気を遣わせないようにしてくれているのが伝わってくる。 本当にみんな優しい。 「それじゃあ、僕は部屋に戻りますね」 「重たそうだけど、大丈夫? 手伝おうか?」 「誠先輩、ありがとうございます! 部屋に美味しいアイスがあるので、一緒に食べましょう」 「アイス! 静、敦、行ってくるね!」 2人が出て行くと、急にシンと静まり返る。 「来夢のやつ、上手いこと連れ出してくれたな」 「え?! 敦が、頼んでたの?」 「静と2人で話がしたくてね」 「何?」 敦と2人だけなんて、なかなか無いことだ。 「鈴先生と旅行に行くってことは、覚悟を決めたってことか? 泊まりなんだろ?」 質問をされて、誠がいたら聞けないことだったと分かった。

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