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第404話.学力診断テスト
1年前にはあまり近寄ることの無かった談話室にいる。
鈴成さんが新1年生に勉強で分からないことがあれば、談話室にいる先輩に聞いてみるといいと言っているようで、敦と誠に連れてこられた。
「あ、敦先輩と誠先輩だ!」
「今日は静が先生だから。オレ達の何百倍も教え方上手いし」
初めて話す人は緊張してしまうが、勉強の為なら平気そう。
「みんなで勉強していて、ここがどうしても理解できなくて」
「どこ? ああ、ここね。これは………」
持って来たルーズリーフに図解付きで説明を書く。
「これで、どう?」
「え?! そういうことなんですか? なら、これは……こうですか?」
「うん。合ってる」
「それ、コピーして見せてくれよ」
1枚の紙にたくさんの人が群がって後ろの人は見えないようだ。
早速敦がコピーをしてそれを配る。
「はー、そういうことか……関連付けたら………」
ペンが止まってる子のコピーした図解の横に、書き加える。
「え? あっ!」
「そう。出来てるよ」
1人1人つまずく場所が違う。
その子用のポイントを書き加える。
「あの……」
「どうした?」
「僕は本当に勉強が駄目で……どこが分からないかも分からないんです」
初めの頃の誠みたいだ。
「敦、明日また、集まって、もらえる、かな?」
「大丈夫だろ?」
学力診断テストをしよう。
暫く談話室にいたけど、人で溢れかえって車椅子で動くのは難しい。
部屋に戻ってテストを作る。
ポイントとなる問題を所々に入れる。
テストを作るのは楽しい。
談話室は人でいっぱいだった。
「食堂に移動して。ちゃんと使用許可取ったから」
敦がみんなに話をしてくれている間に食堂にテスト用紙を置く。
テスト用紙は多めにコピーした。
新入生だけじゃなくて、クラスメイトもぞろぞろとやって来る。
「うわ、本当の試験会場みたいだな」
「これで、後輩よりも悪い点だったらどうするよ」
「マジでそれが怖ぇんだよなぁ」
クラスメイトの言葉にクスッと笑いたくなる。
「点数、つけないよ」
「本島! あ、そうなんだ。なら安心だ」
「3年だけど受けてもいい? 復習するのに良さそうで」
「どうぞ」
先輩まで受けると言い始めて、結局寮の殆どの生徒が僕の学力診断テストを受けることになった。
解答用紙を持って1度部屋に戻る。
見るのはそれぞれポイントの問題5問のみ。
出来ているのと出来ていないので分けていく。
3年生でも全てできた人はほんの1握りだけだった。
分けた人達それぞれに渡すプリントを作成する。
元々問題を作る時に作った解説プリントを用意する。
1人1人の間違えた場所を確認してポイントを書き込む。
渡すプリントは、1つとして同じものは無くなる。
「静。入って平気?」
「誠。散らかしてて、ごめん」
プリントが色々な所に置かれている。
「まとめてホチキス止めなら僕でも出来るよ」
「ありがとう。お願い、するね」
全て出来上がったのは夕飯の直前だった。
「出来たー! 静、お疲れ様」
「誠も、お疲れ様」
夕飯の時にみんなにプリントを渡す。
特に先輩が喜んでくれた。
やっぱり人の役に立てるのは嬉しい。
夕飯の後に鈴先生に話しかけられた。
「本島くん、編入試験の結果だけど、また全て満点だったよ。俺のクラスにおかえり」
「良かった」
頭を撫でられて嬉しくなる。
こんな少しのことでも先生を好きだという気持ちが溢れて止まらなくなりそう。
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