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第405話.文化祭の出し物
車椅子であっても、教室に入るのは本当に久しぶりで嬉しい。
「静くん、おはよう。おかえり」
「ハル先生」
「あ、本島くんって呼ばないとだよね……」
ハル先生は嬉しそうに笑ってる。
「戻って、来たんだ……」
一緒に来た敦と誠と長谷くんと芹沼くん。それに教室で待っていてくれたハル先生と今来てくれた鈴成さん。
車椅子を自分で動かしてみんなと向かい合う。
「ただいま。待ってて、くれて、ありがとう。また、よろしく、お願い、します」
何度も同じことを言っているけど、何回言っても足りない。
「静、オレはまた一緒に学校生活を送れるのが嬉しいよ」
「うんうん。僕も嬉しい」
みんなの眼差しが優しくて、自分の居場所があると感じる。
他の生徒が登校してきた。
「本島、またよろしくな! あのプリント、めっちゃ分かりやすくて、あの後問題集をやってみたらスラスラ解けたよ」
「それな! あのプリントはこれからも最高の参考書になるな!」
学力診断テストの時に渡したプリントが好評で嬉しい。
クラスメイトとは寮も同じだけど、教室で会うのはちょっと違う。
今日のホームルームは文化祭の出し物についてらしい。
ちなみに去年は展示物のみで、クラスとして盛り上がりは無かったようだ。
「じゃあ、意見のある人は挙手を」
「はいはいはい!!!」
「野口うるさいよ。お前しか手上げてないし、どうぞ」
「メイド&執事喫茶でしょ! 去年は却下されたけど、本島も戻って来たし………」
メイド&執事喫茶……?
「そうなると、メイドは……?」
「もちろん、本島と敦と誠の3にっ、あっ! ハル先生も入れて4人!」
「え? 俺も?!」
なんの警戒もしていなかったのだろう。ハル先生が心底驚いている。
「4人以外は執事だな。鈴先生も執事の格好して下さいね〜」
自分がメイドの格好をするのは嫌だけど、鈴成さんの執事姿は見たい。
「オレ達も全員執事で良くないか?」
「ダメだ! 他にも同じような事考えてるクラスもあるだろうから、差別化が必要だ! 学年トップスリーの可愛い子が揃ってるのに……メイドじゃなきゃダメなんだよ!」
「そんなにメイドがいいなら、野口がメイドになればいいじゃんか。なぁ? 誠」
「え? 僕は静とハル先生のメイド姿見たいけどなぁ〜。絶対に可愛いの」
頑張って全員で執事の格好にって考えていた敦も、誠の言葉に頭を抱える。
「それより、喫茶って、ことは、食事とか、お茶とか、どうするの?」
「え?! 紅茶とかティーパックでいれたんじゃダメか? クッキーとか家庭科室で作らせてもらったりとか!」
「家庭科室はたぶん部活動で使われるから難しいな。カセットコンロを用意して何かするか、ミニキッチンの付いてる空き教室に申請を出すかかな」
「ミニキッチン付きの教室なんてあるんだな」
どんな仕様のものなのか気になる。
「ミニキッチンは二口(ふたくち)コンロとガスオーブンが付いてるんだ。ガスをかなり使うから普段は使用許可が下りないが、文化祭の時は使われることもあるよ」
「そこが、押さえられたら、考えても、いい」
「それってメイドのこと?」
黙って頷くと教室内が色めき立つ。
「本島がメイドの格好する事になったら、ほかの3人もしない訳にはいかなくなる……よな?! 文化祭実行委員の水原よ! その教室の使用許可を何としてももぎ取るのだ!」
「アイアイサー」
良く分からないけど、凄い盛り上がりだ。
1人だけメイドの格好をするのは嫌だけど、敦も誠もハル先生もきっと可愛いから………
実は僕がそれを見たいんだよね。
執事姿の鈴成さんと長谷くんも格好良いだろうなぁ
【後日】
水原君は20倍位のクジでその教室の利用権をもぎ取って、僕達はメイドの格好をすることが正式に決まった。
その事を拓海さんに話したら明さん経由で諒平さんに話がいって、今度みんなで諒平さんの家に行くことになった。
規格外の大きさの長谷くんの執事服も用意が難しいらしい。
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