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第407話.喫茶Rainでの出来事
午前中に拓海さんと明さんに買い物はお願いした。
僕はリハビリを終わらせて病院の会計窓口の前にいると明さんと拓海さんがすぐ隣にやって来た。
「静くん、買い物は済ませて家の冷蔵庫に入れてあるから」
「うん。ありがとう。じゃあ、諒平さんの所では、僕が1番に採寸して、もらって、明さんと先に家に帰るね」
「ふふっ、話すのもかなり元に戻ってきたね。良かった。諒平さんには頼んであるからね」
「何を頼んだんだ?」
車椅子に乗ってるから明さんと拓海さんの後ろからみんなが近づいて来ていることに気が付かなかった。
いるのは、敦と誠と長谷くんと芹沼くん、来夢くんとハル先生と鈴先生だ。
「敦。僕はあまり長い時間立っていられないし、1番に採寸してもらって、家に荷物を取りに行こうかと思って」
「それなら、今夜はみんなでうちで夕飯にしたらどうだ? 俺も久しぶりに静のご飯が食べたい」
さすが明さん。疑問を挟む余地もないくらい、完璧な返しだ。しかも自然体。
「オレも食べたい!」
「え? 静の手料理? 僕も食べたい!」
うん、誠は演技じゃなくて本心だな。
「でも買い物とか大変だろ?」
「明さんがいるし、車椅子は手持ちに、荷物を掛けられるから、大丈夫だよ」
敦も納得してくれたみたいだ。
今日のことは敦以外の人はみんな知っている。
みんな何だか楽しそう。
病院で会計を済ませると、ランチは雨音さんの所に行くことになった。
「本当に隠れ家みたいだな」
「いらっしゃい。今日はお客さんが多い日ですね」
「ん? 確かに。この大所帯で無理そうなら日を改めるが」
「何を仰っているんですか。問題ありませんよ。何組かに別れて座って下さい」
雨音さんはいつも通り優しい笑顔だ。
「雨音さん。お久しぶりです」
「静くん。車椅子でも座りやすい高さの机になってるから、安心してね」
「あの、ちょっと良いですか?」
「ん?」
雨音さんはわざわざカウンターから出てきて僕の横でしゃがんでくれた。
「今日の夕飯はオムライスとビシソワーズスープとかぼちゃのサラダと唐揚げの予定なので………」
「大丈夫。今日はパスタ2種だから。サラダも葉物野菜だし、スープもミネストローネだよ」
「良かった」
迷惑を掛けちゃわないか心配だったけど、大丈夫そうで良かった。
「静は奥がいいかな」
「みんなが歩く時に、邪魔にならない、場所にしてね」
お店の中で電動は危ないから手動に切り替えて、明さんに後ろから押してもらう。
「ん? あなた、BARの……」
「え? あ、よくいらして下さる……奇遇ですね」
「本当に。また寄らせてもらいますので」
「お待ちしてます」
ライダースーツを着たスラッと背の高そうな男の人と、可愛い……男の人だ。
可愛い人とパチッと目が合った。
ふわりと笑いかけられて、その人の回りにお花が舞った様だった。
「今の子可愛かったね、洸ちゃん」
「そうだったかな? 俺には今の笑った楓が可愛かったよ」
「こ、洸ちゃん!」
横を通り過ぎてから、会話が耳に入った。
あの2人、お付き合いしてて、敦の言うところのラブラブなんだね。
なんだかこっちが恥ずかしい。
あの2人は僕達が食べている時に出て行った。
お店の前に置いてあったバイクで来たのかな……?
僕も卒業したらあんな風に鈴成さんとここで一緒にランチすることも出来るかな?
みんなが話に盛り上がっている中、僕は1人そんなことを考えて、隣に座る鈴成さんの横顔をちらりと見た。
デザートまでしっかりと頂いてみんなで諒平さんの家に向かう。
少し距離があるが、車椅子の僕に鈴成さんが付き添ってくれた。
それ以外はバスで向かう。
鈴成さんと2人だけの時間は、少しこそばゆい。
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