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第410話.採寸
「あ、誠ちゃん。服脱いだらこっちに来てね」
「うん、分かった」
静ちゃんの苦しみはきっとすぐには無くならない。
「ちょっと恥ずかしいね」
「え?! ちょっと誠ちゃん! 真っ裸にはならなくていいのよ! 下着は着たままで大丈夫だから」
「ほぇ?」
静ちゃんのことを考えてボーっとしていたら、誠ちゃんが真っ裸で立っていて驚いたわ。
それにしても、見るからにモチモチとした身体に、高校生とは思えないほどアレも小さい。
付き合い始めたってさっき言ってたけど、相手の子の苦悩は想像するだけでも大変そう。
「じゃあパンツだけは履くね」
ボクサーパンツを履いているのは今時の子って感じね。
「はぁ、驚いた」
「ねねね、お洋服を作るのって楽しい?」
上半身は裸のままで見上げられる。
「楽しいわよ。私が作った服を着て喜んでくれると私も最高に嬉しいわ」
「へぇー。大変じゃない?」
高校2年生だと、進路のこととかも考える時期よね。
「口は動かしてもいいけど、体は動かさないで」
「ごめんなさい」
誠ちゃんは《動かない=喋らない》のようだ。
ピタッと声がやんで、誠ちゃんもこちらの指示に従ってくれる。
数値を紙に書き留める。
1人1人同じものはなくて、この用紙はデザインを司る者からすると宝物だ。
「大変なことも多いわよ。でも、服を作り上げるのは私にとっては生活の1部なの。無くてはならないものだから……手を上げて? そう。はい、これで終わり」
「ぷはっ……終わったの? はぁ……お仕事はどんなことも大変なのは知ってるの。でも何をしたらいいか分からなくて」
息までとめていたのか、誠ちゃんは肩で息をする。
「仕事は合う合わないもあるし、ゆっくり探すといいわよ。したいことを探す為に大学に行く人もいるし。したいことが見つかれば、専門学校に行くことも考えるといいわね」
「そっか……静も敦も大学には行かないかもしれないって言ってたから、僕も早く決めなきゃって思ってたの」
不安そうな顔で見上げられる。
「急がなくて大丈夫よ。そんな風に思って決めたことは続かないことが多いから」
「そうなんだ! 進路は2年生のうちに決めるように言われてるけど……」
「それでも、まだ半年以上あるでしょ? ギリギリまで考えたらいいのよ」
「分かった! そうするね!」
誠ちゃんはそのまま階段に向かう。
「誠ちゃん! お洋服を着てから戻ってちょうだいね。次は敦ちゃんよ」
「あっ! そっか服着なきゃだ」
服を着終わったら、ペコリと頭を下げた。
「諒平さん、ありがとう! 次は敦だね」
敦ちゃん、来夢ちゃん、ハルちゃんと採寸を終わらせた。
次は拓海ちゃん。明きゅんてば、拓海ちゃんのメイド服も作らなかったらお金を払わないなんて……本当に横暴だわ。
しかも自らデザイン画を持ってきたし。
確かに拓海ちゃんに似合うと思う。でも、メイド服を作ると気が付かれないようにして欲しいなんて………。
メイド服と執事服の間に拓海ちゃんと、誠ちゃんのお相手を入れて、2人にはスーツを作るという名目で採寸をした。
そう、名目で。
拓海ちゃんにはメイド服をつくるし、誠ちゃんのお相手には……誠ちゃんから『ヒロくんの執事姿が見たいの!』と、あんな期待を込めた目で見つめられたら作らない訳にはいかない。
結局採寸が全部終わるまでに夕方になっていた。
生地の色とデザインはメイド服の子達だけは決めてもらった。
静ちゃんについては敦ちゃんと誠ちゃんにデザイン画と色見本を持って行ってもらう予定。
拓海ちゃんについては色まで指定されているから問題なし。
執事服は黒で作るからいいわね。
私、絶対に文化祭に行くわ!
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