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第411話.エプロン

みんながこちらに向かうと連絡が来た時には、下ごしらえはもう終わっていた。 ケーキはレアチーズケーキにしたので、タルト台を焼いて、そこにケーキの中身を流し込み、冷蔵庫で冷やしている。 スープもビシソワーズスープなので、出来上がったスープを片手鍋に入れたまま氷水を張った大きめの鍋に入れて粗熱をとってから冷蔵庫に入れた。 オムライスのご飯も作ってから炊飯器に戻して保温してあるし、唐揚げは下味を付けて置いてあるから、みんなが来てから揚げればいい。 器にレタスを敷いて、その上にかぼちゃのサラダを乗せる。何箇所かに分けて置かないとみんなで食べられないから、3つに分けた。 箸休めとしてきのことベーコンのバター醤油焼きを作った。 おかずにもおつまみにもなる便利なひと皿だ。 「静、ずっと立ちっぱなしは疲れないか?」 明さんは簡易の小さめの椅子をキッチンの端に置いてくれた。 「ようやくひと段落、ついたところだよ。椅子ありがとう」 その椅子に座るとジンジンと足が痛む。 夢中で痛みを忘れていたようだ。 「あれ? 炊飯器はあっちから持ってきたのか? 何で言わないんだよ。重かっただろ?」 炊飯器がひとつだとご飯が足りないから、僕の方に置いてある炊飯器を持って来た。 確かに少し重かったけど、大丈夫だった。 「少しね。でも、大丈夫だったよ」 そこまで言ってから、オムライスにかけるデミグラスソースを作ってなかったことを思い出した。 立ち上がりシンクの下から新しく片手鍋を出すと、作り始める。 簡単に作れるけど、本格的な味に出来ると評判のサイトを見て作った。 確かに時間はそこまでかからないし、味見をしてみたけど、美味しく出来ていた。 これでいつみんなが来ても大丈夫。 そう思ったタイミングでリビングダイニングのドアが開いた。 「うわぁ! 凄くいい匂いがする! 僕もうお腹ペコペコなの」 「静は相変わらずそのエプロンなのな。マジで可愛い」 「手は洗ってきたの? まだなら荷物を置いて、手を洗ってきてね」 急に賑やかになる。 2人に続いて長谷くんも芹沼くんも入って来て、僕を見て一瞬足を止めた。 「「本島?!」」 「いらっしゃい。あ、これ? このエプロンは母さんの、形見みたいなもので、着ないと勿体ないから」 「そういう事なんだ! 俺も驚いたよ。でもよく似合ってる。静くん可愛い」 真っ白でフリルがたくさんの、可愛らしいエプロン。 昔住んでいた家を掃除した時に10枚以上出てきた。 僕に似合う訳はないけど、着ずに捨てることは出来なかった。 母さんが気に入って着ていたのも、今でもすぐに思い出せる。 「ほら、荷物を置いたら手を洗いに行くよ」 拓海さんの声にみんなが動き始めるが、長谷くんと芹沼くんは固まって動かない。 「おい潤一、何で固まってる? 静の可愛さにやられたか?」 「いや、あのエプロンを着た敦を想像したら、ヤバくて」 「バカっ、行くよ」 敦は長谷くんの手首を持って歩き始めた。 「ヒロくん、どうしたの?」 「ジュンと同じで、あのエプロンを着た誠を想像してた。絶対に可愛いよ」 「そうかな……? 後で借りて着てみようかなぁ」 「そうだよ! そうしよう」 敦も誠も好きな人と一緒にいられて幸せそうだ。 みんなが手を洗いに行って、明さんもワインセラーにワインを選びに行ったから、鈴成さんと2人だけになる。 「静、後で学校に帰る前に少しだけ2人で話したいんだけど、いいかな?」 「分かりました」 鈴成さんは微笑むとみんなの後を追って行った。 話したいことって何かな?

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