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第412話.パーティー

みんなが手を洗って戻って来た。 「席はどうするの?」 「お酒を飲むか飲まないかで別れた方がいいかな……ハルくんは今日はお酒飲む?」 「あー、今日はやめておきます。明日も授業がありますから」 どこに誰が座るかでみんなが悩んでいる。 「明さん、僕の方から机持ってくれば、みんなで食べれる、よね」 「そうだな、持ってくるか。誰か手伝ってくれるか?」 「俺が行きます」 長谷くんが手を上げてくれた。 他のみんなは少し並べ始めていた料理ごと机を移動させる。 僕は唐揚げを揚げ始めていたので、コンロの前からその様子をチラ見する。 「なんか、豪華だな………」 「そりゃそうだよ、ね? 静!」 「ん? どういう事だ?」 「とにかく座って。スープとサラダと唐揚げは、これで出来上がりだから。ご飯はオムライスだけど、始めからあった方がいい?」 「オムライス……?!」 反応を示したのは敦ではなくて鈴成さんだった。 そちらを見るとどこか上の空の様で気になったが、誠の声でそれが頭から抜け落ちる。 「やったー! オムライス、ずっと食べたかったの」 「オレも食べたいって言ってたの覚えててくれたのか?」 「あの時は和食だった、からね。その後、何度か食べたいって、2人共言ってたから」 この時、明さんと拓海さんも暗い表情になっていたことに、僕は全く気が付かなかった。 お酒を飲む人達以外は始めからオムライスがあった方がいいと言ったが、まずは乾杯をすることになった。 「乾杯は静くんにしてもらおうかな」 「え?! 僕?」 「うん。元々静くんの発案でしょ?」 拓海さんは微笑んで頷いた。 「では、僕が。1日遅れになっちゃったけど、敦、誕生日おめでとう! これからは毎年、一緒に祝おうね」 「「敦(佐々木くん)おめでとう!!!」」 「え……えぇ? これって、そういう? すっげー嬉しい! みなさん、ありがとうございます!」 敦の目に涙が浮かぶのが見えた。でも、すぐに笑顔になる。 サプライズ成功かな? オムライスはトロトロのオムレツをみんなの目の前で切って、デミグラスソースをかけて出来上がる。 あれ? 前にもこんなことがあったような……? 思い出せない。 「いただきます……ん、んんん? ……すっげー美味い!」 「僕もいただきまふ、ん………卵がトロトロだね!」 笑顔で食べてくれるのは本当に嬉しい。 2人だけではなく、来夢くんも長谷くんも芹沼くんもハル先生も喜んでくれた。 長谷くんと芹沼くんに至っては『母さんのより美味い』とまで言ってくれた。 お世辞だと分かっていても、やっぱり嬉しい。 「静先輩って勉強だけじゃなくて、料理まで完璧なんですね。凄いなぁ」 来夢くんも食事をする所作が美しい。 良いところのお坊ちゃんだとすぐに分かる。 「完璧とか、そんなことはないよ。両親が死んでから、必要にかられて、作るようになった、だけだから。でもありがとう。嬉しいよ」 みんなで食べる食事は美味しくて、あっという間に時間が経ってしまう。 お酒を飲んでいた明さんと拓海さんと鈴成さんにもオムライスを出して、食べ終わるのを待った。 「ケーキはレアチーズケーキにしたんだけど、飲み物はどうする?」 「オレはアイスティーがいいな」 「僕も!」 高校生は僕も含めて全員アイスティーだ。それと鈴成さんも。 「俺はアイスコーヒーな」 明さんと拓海さんとハル先生はアイスコーヒー。 飲み物をみんなの前に出してからケーキを冷蔵庫から出した。 数字の形をしたロウソクの1と7を立てて、火は明さんにつけてもらった。 みんなでHappy Birthdayを歌って、敦に火を消してもらう。 ケーキを食べ終わると、全員で話をした。 「なぁなぁ、夏休みにみんなでどこかに行かないか? 遊園地とかさ。オレ行ったことがなくて」 夏休みという言葉に思わず来夢くんを見ると、今にも泣きそうな顔をしていた。 「あの、僕は無理なので、気にせずみなさんで行ってきて下さい!」 笑顔になりきれてなくて、痛々しい。 「あ、オレ……浮かれ過ぎてた。来夢、ごめん」 「大丈夫です。もう覚悟は出来てますから」 来夢くんの気持ちが痛い程分かるからギュッと抱き締める。 「しずか……せんぱい……?」 「少し2人だけで、話そうか」 来夢くんは小さく頷いた。 「静くん、僕も行こうか?」 「拓海さん、ありがとう。でも大丈夫。すぐ戻るね」 きっと体験者の僕にしか分からないことがある。 少しでも心を軽くして欲しい。

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