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第414話.既視感
来夢くんと一緒に隣に戻る。
敦と誠と目が合って小さく首を横に振る。
来夢くんの力になりたかったのに、自分が元気づけられてしまった。
だけど、さっきよりは明るい表情をしていると思う。
「明さん、ちょっといい?」
「ん? どうした?」
明さんの腕を引いて書斎に入る。
「静?」
「来夢くんに、今聞いたんだけど、西園寺さんの所には、終業式当日の18日に、行くんだって」
「え?! 19日じゃなくてか?」
明さんが驚いてる。
「間に合う……よね?」
本音を聞いてしまった自分には、来夢くんが本当に好きな人の所に行けるように願うことしか出来ない。
「ギリギリかもしれないが……必ず間に合わせるよ」
明さんが力強く頷いてくれた。
「お願いね」
「あぁ」
今日は7月7日だからもう10日程しかない。
リビングダイニングに戻ると敦がすぐそばに来た。
「静、そろそろ帰る時間だけど」
「うん。鈴先生に、話したいことがあるって、言われてて………」
「じゃあ、先に帰ってるよ。今日はご馳走様! やっぱり静の作ったご飯凄く美味しかったよ」
「良かった。また後で」
ハル先生の引率でみんなは一足先に学校に帰った。
見送って戻ろうとしたら、鈴成さんと拓海さんの声が聞こえてきた。
「だから、少し距離を置いた方がいいと思ってて………」
「鈴……。それをこれから言うつもりなの?」
「あぁ」
そう、だよね。汚れきった僕と一緒にいたくない……よね。
胸がズキズキと痛い。
何も聞かなかったことにして、洗い物を済ませる。
途中で鈴成さんと拓海さんも戻って来た。
チラリと様子を伺うと2人とも穏やかな表情をしていた。
僕のことを切り捨てることを決めて、清々しい気持ちになったのかな………?
「静、片付けが終わったら、いいかな?」
「はい。隣で待ってて下さい。終わったら行きますね」
「分かった」
鈴成さんはいつものように微笑んでいた。
片付けが永遠に終わらなければいいと思った。
でも、殆ど終わっていたから5分もしたら、テーブルを拭いて、綺麗に片付いてしまった。
エプロンを取って隣に向かう。
さっき来夢くんと一緒に座っていたソファに、鈴成さんは座っていた。
「遅くなって、ごめんなさい」
「お疲れ様。静も座って?」
少し間を空けて座る。
すぐにその隙間は埋められて横から抱き締められる。
嬉しいのに捨てられる怖さに、どうしていいか分からなくなる。
「もう、いなくなったりしないよな?」
「え?」
「あの時もオムライスだったから。静が大野家に行く前日の夜のメニューが」
あ………。そっか、さっき感じた既視感は……そのことだったんだ。
「俺は、もう静がいない人生なんて考えられないから」
あれ? 今ここに流れている空気は甘くて、捨てられるとは思えない。
俯いていた顔を上げて、鈴成さんの顔を見る。
「静が可愛くて仕方がないんだ。一緒にいると、自分が教師だってことをすぐに忘れてしまう。だから、校内ではもう少し距離を置いた方がいいと思うんだ。浅岡先生達のようにはなりたくないから」
さっきのはこの事だったの?
「僕、鈴成さんに、捨てられるのかと、思っていました」
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