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第416話.家族写真
✳︎時間経過に注意
今年の誕生日はちょうど土曜日だったから、帰ってくるようにと母さんから言われていた。
「敦は明日、家に帰るんでしょ? 僕もまたお姉さんと透くんに会いたいなぁ。写真撮ったら送ってよ」
「え? 撮るか分からないし、恥ずかしいから嫌だよ」
誠はプクっと頬を膨らませてから笑顔になる。
「うん。写真はいいから楽しんできて。1年に1度の自分が主役になれる日なんだから!」
家族が自分の誕生日を祝ってくれるのは、和解をしてからのことでまだ数回目のことだ。
未だに家に帰った時に食卓に自分の席があるのかどうかが1番気になる。
きっと大丈夫だと思いつつ、もしかしたらと不安になる。
「誠、ありがとな。明後日は昼前に病院前でいいんだよな? ったく何でオレもメイド服なんだよ……背も伸びたしオレは執事でいいと思うのに」
「何言ってるの? メイド服の敦と執事服の長谷くんが並んだら最高でしょ??? 僕だって本当はヒロくんにも執事の格好してもらいたいんだから」
潤一もカッコイイと思うけど、個人的には鈴先生の執事姿と静のメイド姿のツーショット写真を撮りたい!
どちらも作るのが諒平さんだってのが更にヤバい。
もちろんオレだって諒平さんの作る服を着られるのは嬉しいけど……スーツだったらもっと素直に喜べたのに。
いつか絶対に作ってもらおう!
家に帰る当日、誠も静も潤一もおめでとうって言ってくれた。
プレゼントなんていらない。みんなの『おめでとう』という言葉が本当に嬉しくて、それだけで笑顔になれる。
足取りも軽く家に帰った。
「敦、おかえりなさい」
「ただいま」
「あんた、また背が伸びた?」
「そうだね、背は伸びたかな。姉ちゃんもどんどん綺麗になるな」
ニッコリ笑いかけると頬を赤く染める。
姉ちゃんは大学でモテモテだろうなぁ。
「兄さん! おかえり!」
ギュっと抱きつく透はまだ小さくて、相変わらず屈託のない笑顔が可愛い。
「透、ただいま」
頭を撫でてやると嬉しそうに目を細める。
「手を洗ってくるから、少し離れて」
「すぐ戻ってくる?」
「もちろん」
「はーい」
手を洗ってリビングダイニングに行くと、両親も揃っていた。
「「おかえりなさい」」
「もうご飯も出来るから座って」
美味しそうな匂いと、ダイニングテーブルにオレの場所がちゃんとあって嬉しくなる。
みんなでワイワイと手巻き寿司を作って食べる。
煮物も美味しいし、胸が温かくなるような時間はあっという間に終わってしまう。
「写真撮ろう」
姉ちゃんが家族全員の写真を撮る。
家のデジカメや自分達のスマホで写真を撮る。
オレのスマホに家族の写真が登録される日が来るなるて……本当に嬉しい。
両親からは家で使うノートパソコンをもらった。
さっそく部屋で設定をして、使える状態にする。
それが終わる頃にドアをノックされた。
「はい」
「敦、少しいい?」
姉ちゃんがドアを少し開けて顔を覗かせる。
「うん、入って」
「じゃあ、お邪魔します」
姉ちゃんはベッドに腰掛けた。
「どうしたの?」
「お友達は戻って来た?」
「静? うん。まだ車椅子が必要なことも多いけど、授業も一緒に受けてるよ」
姉ちゃんは穏やかに微笑んでる。
「そっか。誠くんも元気?」
「誠? あれは相変わらずだよ。でもどんどん頭良くなってきてる。抜かされないようにこっちも必死になってる」
「恋人出来た?」
「あー、潤一?………あっ」
あまりに自然に聞かれて思わず名前を口にしてしまった。
「そう、潤一くんねぇ。カッコイイ?」
「え? 他のやつがどう思ってるか知らないけど、オレはカッコイイと思ってる」
恥ずかしくて顔が熱くなる。
「今度会わせてよ。私の恋人にも会わせたいし」
そうだよね。これだけ綺麗なんだから恋人がいない訳ないね。
「潤一にも聞いてみる」
「夏休みがいいわよね? また連絡するから。じゃあお休み。明日は朝早く行くんでしょ? またいつでも帰ってきなさいね」
姉ちゃんは母親のような顔をしていた。
スマホに新たに登録された家族写真が嬉しくて、寝るまで眺めてしまった。
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