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第418話.イメージされた
ランチにって来た所は路地裏で外観もお店には見えない。
「あ、このバイク格好良いな」
「バイクに興味あるのか?」
潤一もバイクに魅入ってる。
「静はさ、車に乗れないだろ? でもバイクなら乗れるかもしれないじゃん? まぁオレが気にすることじゃないと思うけど」
「敦は優しいな」
潤一の笑顔は心臓に悪い。
ドキドキが止まらなくなる。
お店に入ると外観からは想像もつかないほど木の温もり溢れる造りになっていた。
「本当に隠れ家みたいだな」
「いらっしゃい。今日はお客さんが多い日ですね」
「ん? 確かに。この大所帯で無理そうなら日を改めるが」
「何を仰っているんですか。問題ありませんよ。何組かに別れて座って下さい」
店主さんはとても優しそうな人だ。
「雨音さん。お久しぶりです」
「静くん。車椅子でも座りやすい高さの机になってるから、安心してね」
「あの、ちょっと良いですか?」
「ん?」
アマネさんていう人なんだ。
静とアマネさんが話しているから、カウンター内を見たら吾妻さんがいた。
「え? 吾妻さん?」
「ん? あ、敦さん。みなさんもいらっしゃいませ」
「どうして?」
「吾妻さんと雨音さんは付き合ってて、一緒に働いてるんだよ。ね?」
吾妻さんは一旦手を止めてこちらに来た。
「誠さんの言う通りです。食事を楽しんで下さいね。では、俺はまだやることがあるので失礼しますね」
吾妻さんと話すのが終わった時には静は奥の席まで連れてかれていて、オレは空いている席に誠と潤一と芹沼と一緒に座った。
来夢のことが気になったが、拓海さんが隣に座っているから問題ないだろう。
パスタランチを食べてデザートが終わる頃には、お店に残っているのはオレ達だけだった。
お店を出て諒平さんの家に向かう。
バスに乗ると近くまで行けるらしい。
静はバスに乗れないから車椅子で向かう。
「俺が一緒に行きますから」
鈴先生は学校の校内では『先生』を崩さない。でも外では『静の恋人』に早変わりだ。
見ているだけでも2人が好き合ってると分かる。
早く静も先生と幸せになって欲しい。
大変なことがあった分、幸せにならなきゃおかしいよ。
静達よりも先に着いて家に入る。相変わらず可愛いものがたくさんのその空間は、慣れるととても居心地がいい。
諒平さんからデザイン画を渡されて誠とハル先生と来夢と一緒に見る。
「諒平さん、これってオレ達のことイメージしました?」
「あら、分かるかしら」
「これが静で、これが誠。これがハル先生で、これがオレ。最後にこれは来夢ですね」
「敦ちゃん、素晴らしいわ。正解よ」
普通に見ても分かるくらいにとてもわかり易かった。
「でも。それはあまり考えずに気に入ったものを言ってちょうだいね」
ドアが開いたと思ったら鈴先生に姫抱っこされた静が入って来た。
「本当に静先輩と鈴先生ってお似合いですよね」
来夢は少し羨ましそうに声をかけた。
「有栖川くん。ありがとう。だとしたら嬉しいよ」
鈴先生は微笑んでから静をソファに下ろす。
それを見ていた諒平さんが近づいてきた。
「1番は静ちゃんよね。とりあえず採寸して、後でデザイン画を見てちょうだい。一応イメージでデザインを描いてみたから」
「分かりました。2階に行くの?」
「ほぼ裸がいいから、その方がいいわね。肩に担ぐから掴まってて」
まるで荷物のように運ばれて行く静を見送った。
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