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第423話.不安と自信
「なぁ、敦」
「何?」
「俺の誕生日がいつか知ってるか?」
急にどうしたんだろう……?
「うん。8月27日だろ? それがどうかしたのか?」
「まだ家に帰ってる間なんだけど、その日にうちに来ないか? 敦のこと恋人として親に紹介したいんだ」
「え?! 俺のことを?」
潤一がとんでもないことを言い始めたって一瞬思ったけど、今後も付き合うって考えればそれは早い方がいいのかもしれない。
「もし、敦の家族に先に会った方がいいって言うなら、そうするけど」
潤一が自分のことを真剣に考えてくれてるって分かる。
すごく嬉しくて、こそばゆい。
「あ、そうだ。姉ちゃんが潤一に会いたいって言ってたんだった。あっちも恋人を連れて来るって言ってた」
「敦のお姉さんって大学生だっけ?」
「うん。しかも美人だよ」
玲 姉ちゃんはとてもモテる。
潤一も会ったらオレよりもいいって思うかもしれない。
「敦、また変なこと考えてるだろ。何度も言うけど、俺が好きなのは敦だから。それは何があっても変わらないよ」
子供を相手するように頭を撫でられた。
その手の平から優しさが伝わってくる。
潤一はいつもオレが欲しいと思う言葉を言ってくれる。
「潤一はオレが初めに思ったのとは違うって思わなかった?」
「それは……もっと自信があるとか、そういうことか?」
黙って頷くと少し強いくらいに抱き締めてきた。
「敦は病院で本島に話したことを、俺が全て聞いてたっていうのがまだ気になってるのか?」
その通りだった。全てを潤一に話そうとは思っていなかったし、話したら嫌われると思っていたから。
「そりゃ、嫉妬するよ。俺よりも先に敦のこと抱いたやつがいたってことは」
「汚い……よな。潤一に相応しくない」
「バカだな。そんなこと言ってない。過去なんてどうでもいい。今の敦が俺だけだって言ってくれたら、それでいいんだよ」
見上げたらすごく穏やかな顔で微笑んでた。
本心から発せられた言葉だと分かる。
「過去は無くならないけど、未来は潤一に全部もらって欲しいんだ」
「言われるまでもなく、もらう予定だったよ」
贈られた指輪に口付けられる。
普通にキスされるよりも何倍も恥ずかしい。
「敦、俺と出会ってくれてありがとな」
「バカっ……それはこっちのセリフだろ? オレ、潤一のこと好きになって良かった」
「これ、学校にはつけて行けないけど、休みの日とか気が向いたらつけてくれな」
潤一がつけてくれたから外したくないけど、そういう訳にもいかない。
「うん。無くしたら大変だから1度外すな。これから静と誠の所に行くから」
「つけるつけないは敦の好きにしてくれ」
「ありがと」
指輪を1度外して入っていた入れ物に戻す。
さり気なくCLASSY Jewelryのロゴが入ったそれは、とてもオシャレだった。
「こんなに嬉しいプレゼント貰えると思ってなかったから……オレ、今すごく幸せだよ」
ありがとうの気持ちを込めて潤一の頬にキスをして、指輪の箱を持ったまま静と誠の部屋に向かった。
インターホンを押すと誠がドアを開けてくれた。
中に入って静のベッドに座る。
指輪の箱が手の中にあるのに、現実なのかなって思ってしまう。
良く考えれば北海道でプロポーズ紛いのことを言われたけど、これをプレゼントされるって事は、それを実行にうつそうとしてるってことなのか?!
しかも御両親に挨拶とか……………
緊張しかないじゃないか!
どうしよう……大事なひとり息子を誑かして! とか言われて反対されたら………………
考えれば考える程嫌な方向にいってしまうので、1度考えるのをやめた。
「敦、大丈夫?」
「あ? うん。大丈夫だよ」
「でも顔真っ赤だから………」
それは潤一のこと考えたらそうなっちゃうんだよ。
別のことを考えようとしても、無理だった。
静が戻って来た。
「静、おかえり。なぁ、オレ、どうしよう?!」
「ただいま。敦?」
静は少し驚いた顔をしてから俺の手元を見て微笑んだ。
きっと同じ箱を持ってるから察したんだろう。
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