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第424話.乙女

部屋に戻ったら敦が僕のベッドに座っていた。 「静、おかえり。なぁ、オレ、どうしよう?!」 「ただいま。敦?」 顔を真っ赤にして助けを求めるように見上げられる。 その手の中には小さい箱があって、それは僕が持っているのと同じものだった。 長谷くんのプレゼントが指輪だったということだ。 嬉しくなって自分が微笑んでいるのが分かる。 「長谷くんから、もらったんだ。よかったね」 「嬉しいよ、嬉しいけど………オレがもらって良かったのかな?」 「敦以外の誰がもらうの? 他の人にあげたら、怒るでしょ?」 「ねぇ、それが長谷くんのプレゼントなの?」 誠はずっと聞きたくてウズウズしていたようだ。 「うん。さっきもらった」 「中身は何だったの?」 「え? ゆ…指輪……」 どちらかというと可愛いよりも格好良くなった敦だけど、今は凄く可愛い。 「そっか。敦も静も指輪もらったんだねー。僕もいつかヒロくんからもらえるかなぁ……もらえたら嬉しいなぁ」 1年前は誠は僕達と同じがいいと言っていたけど、今は違う。 好きな人と一緒にいられるというのは気持ちを落ち着ける効果もあるのかもしれない。 「誠もきっともらえるよ。それまで待とうね」 敦は何か言いたげだけど、それは夏休みに入ってからでいいと思う。 誠の頭を撫でると、とても嬉しそうだ。 「うん、待つよ! 敦、静も。これが僕からのプレゼントだよ」 誠は小さなチャームの付いたブレスレットを持っていた。 「諒平さんに相談してね、自分で作ったんだ。アヤメさんて人が色々と教えてくれたの」 「花?」 「うん! 敦はヒマワリで静はコスモス。僕のは雪の結晶にしたの。不器用だから格好良くは出来なかったけど……」 「何言ってんだよ! すっげー嬉しい! 大切にするよ」 「僕も嬉しい。ありがとう、誠」 誠は照れ笑いをしてからあくびをした。 「今日は疲れたね」 「明日からはまた勉強しないとだから、今日はもう寝ていいよ」 「おやすみなさい」 「「おやすみ」」 相変わらず誠は寝付きがいい。 すぐに寝息が聞こえてきた。 「誠はエロいことを覚えないとだよな」 「やっぱり……でもそれは、夏休みに入ってから、だよ」 「え?」 「勉強どころじゃ、なくなっちゃうよ……?」 「そっか。そうだな」 敦は納得したのか何度も頷いた。 「で? 指輪だけじゃ、ないでしょう?」 話を戻したら、敦は目を丸くする。 「潤一の誕生日って8月27日で、その日に家に来て欲しいって。両親に恋人として紹介したいって……言われた」 「長谷くん凄いね。敦のこと真剣に、考えてるんだ」 「オレの姉ちゃんも潤一に会いたがってて、その前のどこかで会うことにした」 なんか話を聞いていたら、この3人の中では敦が1番に結婚しそうだなぁ。 言ったら大変な事になりそうだから、言わないけど…… 僕もいつか鈴成さんの御両親とお会いするのかな…… そう考えると急に緊張してくる。 「緊張するね。でも、いつもの敦で大丈夫だよ」 「そう…かな」 「うん」 隣に座る敦を抱き締める。 「……ありがと………」 小さい声でそう言うと立ち上がった。 「オレはいい友達をもって幸せだな」 「出来たらだけど、鈴成さんとの旅行の前に、うちに泊まりに来て欲しいな」 「来夢も一緒にか? あ、明さんから聞いたんだ。誠と潤一と芹沼には言ってないよ」 いつの間に、でも敦が知っていてくれるのは嬉しい。 「あ、忘れるところだった。諒平さんからメイド服のデザインと色を決めて欲しいって預かってきたんだ」 渡されたデザイン画を見る。 「僕はこれかな。色は……深緑がいいかなぁ」 「オレはモスグリーンくらい明るい方がいいと思う。えっと、これな」 色見本の生地を見ると、確かにメイド服ならこの色の方が見栄えも良いだろう。 僕は服には無頓着だから、こうやってセンスのある人は羨ましい。 「本当だ。じゃあ、これにするよ」 「でも、諒平さんは流石だな。全員が諒平さんがイメージして描いたデザインを選んでるんだよ」 「諒平さんのデザインは、世界的にも認められてる、からね」 みんなのデザイン画もあって、見るだけでもワクワクする。 僕は別にしても、他のみんなは凄く可愛いと思うから。 来週は期末試験があって、それが終わったら買い物に行って、結果がでたら夏休みだ。 今年は楽しい夏休みになるといいなぁ。

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