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第427話.買い物②
「うん、こっちも似合う。何着買う予定なの?」
「行きと帰りで2着の予定ですから、今着たのでいいと思います。後は下着ですよね」
下着?!
来夢くんの言葉に嫌な予感がする。
「普通にタンクトップ、とかじゃ駄目なの?」
「体にフィットするタイプじゃないと変なシワとか寄っちゃうので……着ないと乳首が透けますし」
ち……透け………
それは恥ずかしい………
「心配しなくても、ここにある下着はユニセックス、男女兼用のものだから。安心していいのよ」
里崎さんが微笑む。
「それと、髪が長いから少し巻いたらもっと可愛くなると思うの」
お店の隅にあるメークアップコーナーに連れてこられた。
「これなら1人でも出来るから。とっても簡単なの」
ボールの様なものを持って来ると、髪を6束位に分けて毛先から巻いていく。
耳の辺りまで巻くとボールにネットを被せた。
6束終わるとドライヤーで熱を与える。
「最後に冷やすのよ」
ドライヤーをhotからcoolに変える。
「で、このまま5分から10分放置。元々ストレートだから10分の方がキレイに出来上がると思うわ」
待っている間は手持ち無沙汰だ。
鏡で里崎さんを見ると何か考えているようだ。
「うーん。お化粧はしなくていいけど……リップグロス位は付けてもいいかも」
里崎さんは引き出しの中から小さめのリップを取り出した。
「これ、新作の試供品なの。色もこれが1番唇の色に近いと思うから……やっぱり似合う。うんうん、どこから見ても女の子ね」
「あの……それはないかと………」
そう言いながらも鏡に映る自分は、自分ではないみたいだ。
「これも外すわね」
ネットを外してボールに巻かれた髪の毛がクルっとふわっとする。
「ほら、可愛い。みんなに見てもらいましょうね」
訳も分からずみんなの所に戻る。
「静なのか? どこからどう見てもお嬢様だろ」
「静可愛いね! 唇もキラキラだ」
「静先輩、下着を選びました。ワンピースもそのスカートも下は下着が透けないような作りになってますが、上はそういうのがないので白で選んであります。せっかくだからショーツも可愛いの履いてみませんか?」
渡された下着は胸のところが隠れるようなチューブトップのもので、ショーツはどう見ても女の子用のものだった。
「これ、ずり落ちないかな? それに、これは恥ずかしいよ」
「着てみると分かりますから、取り敢えず着てみましょ?」
首をコテンと傾げて頼まれたら……嫌とは言えない。
どちらも受け取ると試着室に入る。
服を1度全部脱いで上から着てみる。
上と下がゴムになっていて、ずり落ちることは無さそうだ。
下は……よく考えたら直接履いたら買取りだよね………試着ってどうするんだ???
よく分からないから、買取りでいいや
脇が紐になっていて結ぶタイプで、生地は白のレース………
履けたけど、なんか心許ない。
下着姿を鏡で見たら……えっちだ。
紐はちょうちょ結びになってるから、思わず鈴成さんがそれを解く想像をして首を降る。
「何……考えてっ………」
見えなくなるように鏡を背にしてから、もう一度白のシャツと水色のスカート、ジャケットを着る。
何度か深呼吸をしてから試着室を出た。
「どうですか? どっちも着てみましたか?」
来夢くんに聞かれて、何も言わずに頷く。
「サイズは大丈夫でした?」
「それは、大丈夫だけど……やっぱり、恥ずかしいよ」
スカートの下がアレだけなんて……やっぱり無理だ。
「見えないですから、大丈夫です! 上は白を2枚、ショーツは白とピンクを買いましょう」
「え?」
「行きと帰りに必要ですから、ね?」
白とピンク……いつも下着は黒かグレーだから、それも恥ずかしい。
「後は慣れもあるので、このままの格好でランチに行きましょう。喫茶Rainに。あそこで着替えて帰ればいいですから」
「こ、このまま?!」
「わあ、静このままの格好で行くの? あの喫茶店で写メたくさん撮ろうねー」
「そうだよな。慣れは必要だよな」
誠と敦にまでそう言われてしまい、後に引けなくなる。
結局白のワンピースと白のシャツ、水色のスカートとジャケット、下着を2セットにどちらにも合うサンダルを買った。
長時間歩いても疲れないようにヒールはないフラットタイプで、ソールもコルクだから肌触りがいい。
この格好で、鈴成さんに笑われないか心配になる。
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