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第439話.怪しい2人組

いつも行動は2人1組だった。 会話は録音していたとしても聞き出す項目など忘れてしまっては元も子もない。 今日はルイくんと会う日だ。前回と同じように買い物を済ませて喫茶店へ向かう。 「小型カメラの設置は出来たって言っていたんだよね?」 「えぇ、ベッドが映るように設置したと言っていました」 ルイくんは文字の読み書きが出来ないため、いつも電話で話している。 「今日はそれを回収して持って来ると言ってましたが、見つかったりしてないといいのですが………」 あの子まで西園寺の変態の餌食になるなんて、あってはならない事だ。 「心配だね」 扉の開く音がして、そちらを見ると初めてあった時とほぼ変わらない姿のルイくんがいた。 すぐにこちらに気がついて歩いてくるが、後ろから付いてきた人が気になった。 席から立つとドアに向かって歩く。 正面から相対する形だ。 「あ、すみません。どきますね……つけられてる、後で連絡する………」 横を通り過ぎる時に小声で伝える。 あ、吾妻さんを置いてきてしまった…… 思った通り、2人いたルイくんをつけていた人のうちの1人は俺を尾行している。 もう1人はルイくんに張り付いているのだろう。 嘘をつくのが苦手そうだったから、おそらく西園寺家での行動が今までと違かったのだろう。 明さんは執事などと話をするのは、ルイくんから返してもらう小型カメラに映ったものを確認してからだ、と言っていた。 スマホが鳴って確認すると、吾妻さんからのJOINだった。 『ルイくんから小型カメラを預かりました。つけている人達はこちらの味方になってくれるらしいですよ(笑)』 「はあ?」 立ち止まって振り向くと至近距離にその人物がいた。 「榎本様ですね。ルイから話は聞いています」 「味方なら初めからそう言えよ……喫茶店に戻るぞ」 「ご用事を思い出した訳では無かったのですか?」 「西園寺さんに頼まれて尾行してたのかと思ったんだよ」 言われた男は少し考えるように上を見る。 「頼まれましたよ。ですが、私もあの方にはついていけないと思っているので………尊敬に値しない主人などお仕えするのが嫌になります」 話を聞けば、ルイくんの後を追っていた2人は少年メイド(ルイくん以外にもいるらしい)の教育係兼執事らしい。 執事長も西園寺の変態にはほとほと困っているとのことだった。 「自己紹介が遅れて申し訳ございません。私は曙(アケボノ)と申します。もう1人は山川(ヤマカワ)です」 喫茶店で2人からもたくさん話しが聞けた。 小型カメラの設置も2人がしてくれたらしい。 「カメラを設置してから約1ヶ月ですが、何人くらいの子を?」 「見ればわかることですが、3日に2人は……20人にはなるかと……全て違う子で、未成年だと確認が取れています」 「みんな、泣いていました」 証拠をと思っているから野放しになっているが、それが心苦しい。 本当ならその子達も全て助けたかった。 「個人は特定出来ているってことですか?」 「はい、気になった子のことを調べるように言われて、調べることを仕事としている執事もいるので……元探偵を雇っているので行動パターンまで全て調べ上げられます」 「調査表が残っているようなら、そのデータも手に入れたいですね」 2人は顔を見合わせてから下を向く。 「あいつが協力してくれるとは思えません。大金を積めばなんとかなるかもしれませんが………」 「明さんに相談するか……」 「いくら必要か知らないですけど、明さんなら現金で一千万円くらいまでならすぐに用意できると思いますよ」 相変わらず明さんは住む世界が違うと思う。 でも、その人が味方だと思うと本気で頼もしい。 「本人に確認も必要になるので、また会うことも出来ますか? それと、その元探偵の方に必要な金額を提示してもらって下さい」 「分かりました。靖様に悟られないように行動するので、少し時間を下さい」 「全てのタイムリミットは7月中旬になります。そのことを頭の片隅でもいいので入れておいて下さい」 思いがけず新しい味方が出来た。 全く信頼されていない西園寺の変態の運命は、この日から急速に下降し始めたのだった。

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