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第440話.決意
「なんか、金が必要になるかもって?」
あの後すぐに明さんに連絡をして、喫茶Rainに集まった。
「家に連れ込む子達のことは元探偵を雇って調べさせているらしく、その調査表と今回の動画があれば、と思って」
「その元探偵は金に弱いってことか?」
曙さんと山川さんの話では、西園寺の所で働くことになったのも金を積まれたかららしいと言っていた。
「おそらく、ですが」
「俺が直接会った方がいいだろうな」
「一緒に行ってもいいですか?」
いつも明さんは後藤さんと一緒に行動しているから、ダメだって言われると思ったけど……それでも、自分も動きたかった。
「ん? 来るか? 相手も若いのがいた方が油断するかもしれないし、大輝が持ってきた情報だ。構わないよ」
頭をわしゃわしゃと撫でられる。
「本当に?」
「捨てられた子犬みたいな顔するな。元探偵との連絡は大樹が取った方がいいだろう。もし大樹と2人なら会うと言われたら、俺はそばで待機する。金も大樹から渡せばいい」
捨てられた子犬?!
ひとまわり以上年下だと、子供だって思われるのか?
もしかしたら明さんにとっては来夢も俺も同じなのかもしれない。
いつもならポーカーフェイスを貼り付けるのに、上手くいかない。
「大輝、俺はお前のこと信頼してる。だから色々と任せようと思った。最終的に来夢くんを救うのは大輝だと思うよ」
「俺が来夢を? ……俺は昔のような笑顔が見たい。あんなに苦しそうな顔は見ていたくない……それだけなんだ」
来夢が幸せになるのなら自分があの子の未来にいなくても構わない。
もちろん俺が幸せに出来たら最高だが、あの子から見れば俺も西園寺も“おっさん”に変わりはないだろう。
「あ、こんなに忙しい時だが、静が大輝に会いたいと言っているんだ。どうかな?」
「静って実さんと明美さんの息子さんですよね? 入院してるっていうのは、秀明さんが関係してるんですか?」
大野家の元当主の逮捕は一時的にニュースでも大きく報道されていた。
「あぁ、俺の力が無いばかりに……あの子には苦しい思いをさせてしまった。その分来夢くんを助けたいという気持ちが人一倍大きい」
昔見た静くんは明美さんの趣味で可愛らしい格好をさせられていた。
そういう面でも来夢と似たところがあるのかもしれない。
「明日行きますよ。病院は?」
「ここだ。明日は俺も晴臣も病院にいる予定だから、面会時間ならいつ来てもいい。朝の10時から夕方4時までが面会時間だ。その病院には俺の婚約者も勤めてる。会うか?」
スマホに表示されたのを見て、自分のスマホで検索する。
明さんの婚約者……男性だよな?
「会いたいです。明さんをここまで丸くした人がどんな人なのか興味があるので」
昔の明さんはもっと冷たくて切れ味が鋭いイメージだった。
「丸く?」
「それ、凄く分かります。昔の明さんはもっと近寄り難かったですよね。眼光だけで凍りつきそうでしたから」
後藤さんの言葉に吾妻さんが何度も頷いている。
「久し振りにお会いした時に、笑顔を見せられて逆に怖かったのを覚えてます」
吾妻さんが苦笑する。
「だからあの時顔を引き攣らせていたのか? 酷いな。拓海は俺を見てくれたんだ。大野家は関係なく俺だけを……そんな奴は今までいなかった。それに俺の方が惚れてる」
明さんは気持ちを隠そうなんて思っていない。
きっと誰が見てもわかるように気持ちを伝えてきたんだと思う。
来夢に気持ちを伝えられない自分の弱さが際立つ。
西園寺から助けたら必ず自分の気持ちを伝える
俺は朧気に考えていたことを決意として固めた。
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