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第442話.類は友を呼ぶ
『吉野忠之』を調べると確かに探偵事務所のホームページに辿り着くが、かなりの高齢だと分かる。
しかも同一人物であるのなら“元”ではなく、現役となってしまう。
ある人に連絡をする。
凄腕の探偵。バーで知り合って、会えば楽しく酒を一緒に飲むだけの飲み仲間。
人を調べるのなら任せて欲しいと言っていたのを思い出した。
「はい、明か? どうした? 飲みのお誘いにしては早い時間だな」
「きょうは依頼をしたくて連絡した。金はいくらでも払う。明後日の午前中までに、調べて欲しい人がいる」
名乗っている名前、どうやら少し前までは探偵だったらしいこと、今働いている場所。
分かることは全て伝えた。
「確実に言えることは、吉野忠之は完璧に偽名だってことだな。んー、調べた結果は直接会って伝えたいが、どこにする? 明後日の朝だよな?」
10時に病院に来るように話す。俺以外にも人がいていいか確認すると、誰がいても構わないと笑っていた。
大輝にも同席させる為に連絡をした。
「自分でも少し調べようとしましたが、偽名であることしか分かりませんでした」
「俺も1人で調べるのは無理だと思って、信頼出来る探偵に頼んだよ」
静くんの病室で話していていい内容なのかもよく分からないが、その探偵もここに来るらしい。
扉をノックされて、明さんが扉を開ける。
「少し遅くなって申し訳ない。資料は紙の方がいいかと思って印刷しようとしたらインク切れで……データだけ持ってきた」
「ノートパソコンがあるから、少し待て」
いきなりUSBメモリを出されても困る。
ノートパソコンを取りに行くと静が不安そうな顔をしていた。
「来夢くんを助ける為に必要な事なんだ。心配しなくていい」
頭を撫でると小さく頷いた。
拓海が静を抱き締める。
戻ってノートパソコンで資料を開く。
「んー、本名は吉田眞尋。年は23歳で探偵はしたことが無いが、小学校高学年から中学生の男の子に異常なまでの執着がある。何度も部屋に監禁したことがある………」
読み上げてからこの名前に聞き覚えがあると感じた。
「明さん!」
「静?」
「その人、敦の家庭教師、してた人……」
敦くんをレイプした奴か。
確か薬を盛って部屋に連れ込んで………。
クズの所にはクズが集まるってことか。
調べ上げた見返りに子供達がさらに犠牲になっている可能性もあるかと思うと、2人まとめて……いや、まずは西園寺だ。
「2人共、最終的にはどうにかするが、とりあえずは西園寺からだな」
「吉田のやってる事もそうとうエグいぞ。使えるか分からないが、動画もある」
添付ファイルを指差された。
静には音声も聞かせたくない為に、拓海のカウンセリングルームを使わせてもらう。
3人で動画を見たが薬を飲ませたり、足枷をつけたり、無理矢理身体を繋げる所まで綺麗に撮れている。
「これは、盗撮ではないな」
「あぁ、吉田のコレクションの1つだ。今までの行為は全て録画していてな……ものによってはハンディカメラで行為に及びながら撮っているものもある」
「どうやってこれを?」
溜め息をついてから目を合わせる。
「探偵を語るこいつの事は以前から調べていたんだ。同じ趣味があると言って近付いて仲良くなってな。本人から貰ったんだ」
「本人から……」
「そうだ。ほんの一部分だが、この子が今までで1番素敵な足をしていたって言ってたよ」
映し出されたのは白猫になった敦くんだった。
まだあどけない顔をしているが、間違いない。
嫌だと恐怖に顔を歪めて涙を流す姿は、今の敦くんからは想像もつかないものだ。
今回のミッションにこの画像データの消去も含めることに決めた。
俺は西園寺と吉田、2人を潰すと心に決めた。
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