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第447話.気持ち

大輝くんが席を立って黎渡くんと向かい合わせに座る。 「明さんは面食いなんですね」 ポソッと呟いた言葉に思わずクスッとしてしまう。 「ありがとう。お世辞でも嬉しいよ」 「え?! 俺、声に出してた?」 慌てる姿は間違いなく子供だ。 2卵生の双子は普通の兄弟と変わりないから、来夢くんと全く似ていなくても何ら不思議ではない。 「うん、聞こえちゃった」 「あの……お世辞じゃないです。男の人をこんなに素敵だと思ったのは初めてです」 ストレートに言葉にされると気恥ずかしい。 「と、いうことは……好きな人は女の子?」 「もちろんそうです。高校で同じクラスになった小さくてふわっとした子で、可愛くてずっと見ていたくなるような、そんな子です」 思い浮かべているのかとても優しい顔で微笑む。 「もしも来夢くんが黎渡くんのものになるって言ったらどうするつもりだった?」 「え?」 「その女の子のことは諦めてた?」 「いや、あれ? 俺、そこまで考えてなかった」 呆然とした表情で頭を抱える。 「本気で好きな人がいるのなら、そういう事は言わない方が良かったね」 「本気……?」 「うん。自分がどうなっても相手の幸せを1番に考えられるような相手のこと」 僕も明さんが僕以外の人が良くなったと言われたら、身を引くと決めている。 その後で明さん以上の人が現れるとは思えないけど、迷惑になるような事はしたくない。 いけない。考えただけで涙が出てくる。 そんな事にならないようにちゃんと気持ちを伝えなければと思う。 「もしもその女の子が黎渡くんではない人を好きだって言っていたら、どうかな?」 「え? 諦める他ないです。もっと好きになれる人を探しますよ」 「うーん、なら、好きだとは思っていなかった子から告白されたらどうする? 好きな子がいるからってすぐに断る?」 黎渡くんが固まる。 正直だな。 「どうだろう……その子のことを好きになる可能性もあるよな……でもそれなら気になる子はもう一人いて……」 誰のことを本当に好きかなんて、なかなか分からないものだ。 静くん、敦くん、誠くんはそれぞれ好きな人が分かっている。 色々あったけど、3人とも両想いで良かった。 静くんの話しでは来夢くんも好きな人がいるってことだった。 久々に会って助けてくれた人……まず間違いなく大輝くんのことだろう。 「気になる子?」 「はい……ルイです。笑った顔が可愛くて………本当の姿を見てみたいです」 ルイくんは西園寺家の少年メイドだったよね。 「あの子の行き先も考えないといけないね」 「そうですね。メイドとして他の家に行くことになるんですか?」 「明さん!」 「ルイくんはまだ決まってないというか、どこにも行きたがらないんだ」 「え? 俺が話してみます」 急に立ち上がると苦しそうな顔をする黎渡くんが、女の子よりもルイくんを気にしていることは火を見るより明らかだ。 「そうしてもらおうと思って、ここに来るように呼んでるよ。さっき一樹が駅まで迎えに行ったから、そろそろ着く頃かな」 黎渡くんは心配そうに扉を見つめる。 どこにも行かないということは、また路上生活に戻るということになる訳だから誰もが心配になる。

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