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第458話.溢れる想い

今回の事が始まる前に森さんに『研究所からドイツのラボに戻るように言われた。俺の気持ちは変わっていない。晴臣の事が好きだ。出来ればドイツに一緒に来て欲しい』と言われた。 これ以上返事を待ってもらうことは出来ない。 たくさん考えても答えは出なかった。 それはもう答えが決まっていたからだと……今なら分かる。 森さんとは北海道に行った時からずっと連絡を取り合っている。 初めは静さんの容態についての連絡だったが、だんだんと1日に1回は声を聞きたくなって……声を聞くと会いたくなった。 でもそんなことを素直に言える訳もなく、森さんの『会いたい』『好きだ』に何の反応も出来ていない。 今だって抱き締められて森さんの背中に腕を回そうかどうしようか悩んで、結局腕を動かせずにいる。 全く恋愛経験がなかった訳では無い……と思う。 付き合ったこともある……と言えるのか……? 1週間もしない内に別れてしまった。 『晴臣くんて、何考えてるのか分からないし、一緒にいて楽しくないのよね』 そう言ってバイバイと手を振られたことがずっと心に引っかかってる。 森さんに同じように言われたらと思うと、全てが怖くなる。 怖い……だけど、この気持ちを伝えずに二度と会えなくなることはもっと怖い……… 「……森さん………」 自分が思うよりも声に力が無い。 「どうした?」 どうしても目を見て言いたかった。 体を離して目を合わせる。 「俺も、連れて行ってくれますか?」 「え?」 「あなたと一緒にいたいです」 驚いた顔をしている森さんに一瞬だけ触れるキスをした。 「好きです」 声が震えてしまった。 目を逸らさずに自分の想いは伝えた。 「なら、約束して」 「約束?」 「うん。ボディガードの仕事をするなとは言わない。だけど、こんな傷はもう作らないで。1歩間違っていたら死んでたよ?」 腕の傷に手を置かれた。 「もうボディガードを仕事としてすることはないと思います。今後は森さんの専属ボディガードということでいいですか? あなたを守る為なら傷を作ってもいいって思っているのですが………」 「尚更ダメ! 俺の為にって言うなら……笑顔でいて欲しい」 両手で頬を包まれた。 おでこ同士がコツンと合わさる。 さっきは自分からキスをしたのに森さんの顔が目の前にあってギュッと目をつぶる。 森さんは綺麗だから……眩しいよ……… 俺なんかが一緒にいて本当にいいのかな……? 「晴臣、退院はいつ?」 「たぶん2、3日で退院出来ると思います。通院は必要ですが………」 「退院して今回の事が全て終わったら俺の所に来てくれるか?」 不安そうな声に森さんも怖いんだって分かる。 「ホテルですか? お金ももったいないですし、うちに来ますか?」 「……いや、ホテル代は研究所持ちだから問題ない。それに初めては家よりもホテルの方がいいだろ」 「……?………」 森さんは何を言っているのだろうか……? 「晴臣が好きだって言ってくれたんだぞ? 理性を総動員してる。本当なら今すぐにでも押し倒したい」 初めてって! そういうこと?! 「ば……ばかっ」 「言ったはずだよ? 俺の子供を産んで欲しいって」 俺の抗議なんて耳に入らないらしい。 目もギラギラしている。 「筋肉質で抱き心地が悪いと思います」 「そんなの関係ない」 「俺と一緒にいても楽しくないですよ。きっと」 「そうか? んー。晴臣が隣にいてくれることが嬉しいからそれでいいだろ?」 「なんの取り柄もない俺で本当にいいんですか?」 付き合ってから捨てられたら、今切り捨てられるよりもずっと辛い。それなら、今切り捨てて欲しい。 嫌だけど仕方がない。 「そんなに自分を過小評価する必要もないだろ? 人を守れるだけの強さも、寄り添う優しさも晴臣のいいところだと俺は思うよ」 「………森さん…………」 そこが自分のいいところだなんて思ったことも無かった。 「もっとたくさんいいところを見つける自信あるよ」 ニッコリと笑う森さんに目を奪われる。 「俺も森さんのいいところ沢山見つけたいです」 自然と笑顔になる。 「やっぱり笑顔がいいな」 ギュッと抱き締められて、今度は腕を背中に回した。 「好きだよ」 「俺も……んっ………」 森さんからのキスは俺を幸せな気持ちにしてくれる。 いつまで……? って思うくらい長かったけど、嬉しいからされるがままだった。

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