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第465話.苦しい
敦はきっと驚くよね………
晴臣さんがあの『眞尋さん』に刺されたって知ったら。
でもどこか別のところから知るよりも、今知った方がいいと思う。
待ち合わせの時間は敦だけ少し早めにしてもらった。
「静!」
「敦、ごめんねちょっと早めに、来てもらって」
「いや……話って何?」
「あのね、晴臣さんを刺した人、なんだけど……実は吉田眞尋さんなんだ」
「え?! 眞尋さんってあの?」
かなり動揺しているのが手に取るように分かる。
「うん」
「どうして?」
「眞尋さんね、西園寺さんに、雇われてて、未成年の子達を、調べて連れて行ってた、みたいで………」
「そ、なんだ。詳しいことは晴臣さんから聞くよ。たぶんオレも絡んでたんだろうし………」
眞尋さんのこともニュースになっていたが、西園寺さんのことが大々的に報じられていたから、敦は気がついていなかったみたいだ。
「敦、本島。あれ? 待たせたか? ……敦どうかしたか? 顔色が悪いぞ?」
「何でもないし、大丈夫。芹沼と一緒じゃないのか?」
「河上が遅刻しそうだからって迎えに行ったよ」
「ようやく取り扱いに慣れてきたみたいだな」
長谷くんが来てくれたから敦はいつも通りに戻った。
でも心の中では葛藤があると思う。
「ごめんね、遅くなって」
「迎えに行って正解だったよ……初めてご両親に会ったから警戒されてしまったけどな」
誠と芹沼くんが来たのは長谷くんが来てから15分後だった。
「僕がね、ちゃんとお付き合いしてるヒロくんだよって紹介したんだ!」
「前から俺の話だけはしていたみたいで……あなたが……って言われた。その後でよろしくお願いしますって頭下げられて……緊張しまくりだったよ」
大きな溜め息をつく芹沼くんは相変わらず大変そうだ。
「じゃ、行こうか」
晴臣さんが入院しているのは拓海さんが勤めている所で僕が入院していたのと同じ所。
今日もリハビリの予定があるから、元々行くことになっていた。
電車に乗るとあまり混んでいなくて席も空いていた。
「静は座れ。オレ達は大丈夫だから」
「うん、ありがと」
遊園地のことを思い出してみんなに話しかける。
「あのさ、今度の遊園地、なんだけど……やっぱり来夢くんも、一緒に行きたいな」
「そうだよな! 来夢も助かったことだし後で電話して誘うか」
「あともう1人一緒に行きたい子がいるんだけど……」
「えー、だれ?」
コテンと首を傾げる誠が可愛い。
「晴臣さんの所にいるはずだから後でね」
ルイくん……ルイって呼ぶことになったんだった……ルイは長谷くんと芹沼くんを怖がるかな………?
話してみたら怖くないって分かるから大丈夫だよね。
晴臣さんの病室に着いたら、結構人がいて驚いた。
「退院は今日になったの?」
「あ、静さん。いえ、退院は明日です。みんな心配し過ぎです」
「静お兄ちゃんが来たね」
午前中に髪を切って、元の色に戻したルイは金髪碧眼の美少年になっていた。
その両隣に明さんと拓海さんがいて、雨音さんと吾妻もいるし、森さんもいる。
そこに僕達も加わったから病室は人でいっぱいだ。
「ルイ、可愛くなったね」
「静お兄ちゃん、ありがと」
はにかむように笑う姿がまた可愛い!
お兄ちゃんと呼ばれるのは慣れなくてくすぐったい。
「え? 金髪の美少年……?」
「うわあ、キラキラだ!」
晴臣さんよりもルイに視線が集まる。
「この子のこと紹介するから、僕のカウンセリングルームに行こう」
「敦と僕は晴臣さんと話があるから、終わったら行くね」
不安そうな顔でルイがこちらを見上げてくる。
「明さんも拓海さんもいるから大丈夫だよ。それに僕の友達はみんな素敵な人ばかりだから」
頷いてからルイは拓海さんの元に走って行き、手を繋いでいた。
戸籍が出来上がるまで一緒に暮らすことになったが、おそらくその後も家族として一緒にいることになるだろうと思った。
雨音さんと吾妻と森さんにも出て行ってもらって、病室には3人だけになる。
「晴臣さんが刺されたのってオレのせいですよね」
「敦さん?」
「静から眞尋さんに刺されたって聞いて……晴臣さんは優しいから、あの人のことを許せなくなった?」
「そうだね……あいつが持っていた動画を見て、不能にしてやりたいって思ったよ」
晴臣さんは思い出しているのか雰囲気が変わる。
「え? 動画………」
「あいつのコレクションは全て警察に押収されたよ。世の中に出回ることもないから」
「あの時写真だけじゃなくて撮られていたんですね……」
敦が急に小さくなったように思えてギュッと握り締めれた手を両手で包む。
「静、ありがとな。大丈夫だよ。オレにはみんながいるから」
「……うん」
無理していることは分かったけど、僕は何も言わずに隣にいることしか出来なかった。
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