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第469話.大切にしたい②
頬を触る人がいて顔を上げる。
ぼやけていてもそれが誰かなんて一目瞭然で………
「何を泣いているんですか?」
見つめることしか出来ない。
「森さんも俺の本気を分かってない。この部屋に入った時点で、全ての覚悟を決めていたから。……身体が冷え切ってるじゃないですか! 風邪引きますよ!」
俺と同じようにバスローブ姿の晴臣を抱き締める。
消えたりしない……本物だ………!
「晴臣も俺から離れていったと思った」
「俺“も”?」
「晴臣は何もかもが初めてかもしれないが……」
「知ってますよ。森さんに今までたくさん付き合った人がいたことも、その人達にどんなことをしていたのかも。諒平さんや明さん、拓海さんから話は聞いていましたので。で? 俺にもそう出来るって思ってます?」
しゃべり方が元に戻っているのは怒っているからか?
「俺は逆にあなたを監禁するくらい訳ないです。だからそれを怖いとは思いません。怖いと思うよりも、そうされることを妄想して喜んでた」
「はあ?!」
思いもしない言葉に変な声が出てしまった。
「貴方が好きだと言ってくれるのと同じだけその気持ちを返せるくらい、俺も貴方にのめり込んでる……生半可な気持ちで好きだと伝えた訳ではないですから」
目を見れば悲しみを纏っているのが分かる。
晴臣の言葉を信じきれなかった俺のせいで悲しませている。
自分自身が許せない。
「愛している。こんな気持ちは初めてで、自分よりも晴臣の気持ちを優先したい。だからこんな情けない俺に呆れたら今からでも出て行っていいよ」
パシンっ
相当手加減はされているだろうが、頬をはたかれた。
「今言ったの聞いてませんでした? 俺は、俺自身の判断で今ここにいるんです。貴方と同じ気持ちだと言いましたよね? 今日は俺にとっても記念日になるんです。初めて好きになった人に抱かれるなんて……一生に1度しかないでしょう? 緊張して何度も身体を洗ってしまって遅くなったのは悪かったと思ってますけど………それがどうしたらこうなるんですか! もっとしっかりしてください………」
晴臣が俺と同じ気持ち……?
今日が2人の記念日……?
「晴臣」
「はい、何ですか?」
「愛している。今から抱いたらもう一生離せなくなる」
「離れるつもりはありません。俺も森……のこと愛していますから」
そうか、怒っていても凛としていて……
幸せだって綺麗に微笑んでいる
今、目の前にいる晴臣が『素の晴臣』なのだと分かる。
「あ、ほっぺた赤くなってますね。冷やしましょう。軽くのつもりだったけど、俺は怪力だから」
慌てて背を向けようとする晴臣を抱き締めた。
「すぐ戻りますよ?」
「それでも行かせたくない。晴臣に愛してるって言われたのに離れたくない、このまま抱きたい」
後ろから抱き締める形になったから、そのままうなじにキスをして舐める。
「ひゃっ」
「甘いな」
チュウっと吸い付いて紅い痕が残る。
俺のものだって印。
普通にしていたら自分では見えない場所だ。
気が付いたら怒られるかな……?
「………んっ……ゃっ…あっ………」
肌も甘いが声も甘い。
口に手の甲を当てるのは声を聞かれたくないからか?
「声を聞かせて欲しい」
「変な、声だから……」
震える声はもう先程のような勢いはない。
「うーん……なら声のことを考えられなくなるくらい気持ちよくなろうな」
「え?」
「ほら、声はいいから顔を見せて」
身体ごとこちらに向けた。
少し潤んだ目に紅潮した頬。非難するような視線もどこか甘く感じる。
キスをしたらうっとりと目を閉じる。
俺も目を閉じて唇の感触を楽しむ。
晴臣の薄い唇を舐めるとそこに隙間が出来て入り込む。
さっきまでは逃げ惑っていた舌を晴臣から絡めてきた。
舌を吸い込むようにすると逃げようとするのが分かるが、より強く吸い込み逃がさない。
舌を解放すると唇ごと離れていってしまった。
「そ、そんなに吸ったら抜けますよ……!」
「抜けないよ。それとももっと試してみる?」
ペロリと自分の唇を舐めると、晴臣必死に首を横に振る。
そんなに嫌だった? それとも気持ちよくなるのが怖いのか?
どちらにしろ可愛いことに変わりはない。
「分かったよ。しないから……な?」
今は、ね。
「は…い……」
どちらの唾液で濡れのか分からないが、濡れそぼった唇がいやらしい………
そこから目を逸らしてギュッと抱き締める。
そろりと腰に回された腕の感触に頬が緩む。
本来ならお姫様抱っこをしたいところだが、筋肉量もあって俺より重いだろう晴臣を抱き上げることは無理だ。
立ったままこの後の行為を続ける訳にもいかないので、1度引き剥がすとぽんと肩を押す。
足がガクガクしていた晴臣はベッドの端に座りそのまま仰向けに倒れた。
「森……さん?」
「ベッドの上で晴臣の全てを見せて……?」
バスローブの紐の結び目に手を持って行くとその手を握られた。
「自分で……脱ぎます」
自らベッドの上にあがるとカタカタと震える手でゆっくりと結び目を解いてゆく。
自分もバスローブを脱ぐと、分かってはいたがソコはもう臨戦態勢をとっていて……思わず苦笑する。
バスローブの前がはだけた状態の晴臣の姿にどうしようもない程欲情する。
筋肉質ではあるがしなやかな身体。
誰も触ったことの無いだろう乳首は綺麗なピンク色で……ソコは普通の成人男性と変わらない。
緊張からかバスローブの袖口をギューッと握りしめて俺から目を背けるその姿は、正直クるものがある。
でも…………
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