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第477話.森林浴
別荘に入り、取り敢えずリビングダイニングに向かう。
大きな窓からは緑しか見えない。
「うわあ、部屋の中にいても森林浴しているみたい」
「エアコンをつけなくても涼しいよな」
「そうだね」
窓に向かって立っている来夢を後ろから抱き締める。
「くっつくと少し暑いかな?」
「……平気です」
こんなに小さくて華奢なのに……有栖川家の全てを背負って変態のおっさんの所に行こうとしてたんだよな。
知らず知らずのうちに腕に力が入る。
「ダイ兄ちゃん?」
こちらを振り向いて見上げる可愛さったらない
唇もツヤツヤでぷるんとしている。
「なあ、キスしていいか?」
「……はい………」
目を閉じるその動作に目が離せなくなる。
まつ毛が少し震えている。
緊張しているのか?
抱きしめている腕を外して来夢の体をこちらに向ける。
目はぎゅっと閉じたままだ。
顎に手を当ててもう少し上を向かせてから顔を近づける。
鼻の頭にキスをする。
「そんなに緊張しなくても」
「だって……んぅっ……」
目を開けて目が合ったのを確認してから、唇をそれで塞ぐ。
急いで目を閉じるそんな仕草まで可愛くて、可愛くて………好きだという気持ちが溢れて止まらなくなる。
何度も啄むようにキスをするが来夢は唇を固く閉じたままだ。
体までカチコチになっている。
もしかしたらこういう事をするのは初めてなのか?
だとしたら嬉しいが……今までの来夢を見ていて逆のことを思っていたのだ。
頭によぎった考えは直ぐに否定してしまった。
キスをやめてぎゅっと抱き締めると、息を吐き出して胸の辺りにスリっとされる。
「ダイ兄ちゃんも…ドキドキしてる」
「そりゃあ好きな子とこうしてたら、ドキドキするよ」
初恋が来夢だと自覚もしたし今まで付き合った人には悪いが、これ程愛しいと思えるのも来夢だけなのだ。
その子が俺を好きだと言ってくれて腕の中にいるのだから、ドキドキしない訳が無い。
「ダイ兄ちゃんは……えっちなことしたいって思ってる?」
「思ってるよ。でも今回の旅行は勝手に決めて連れてきてしまっただろ? 無理しなくていい」
そんなこと言いながら、ローションもゴムも準備してきてるけどな………
「ありがと」
来夢から『えっちなこと』なんて言葉を言われるとは………やっぱりこういうことは初めてじゃないのか?
おっさんにされてなかっただけで、昔の恋人とはしていた……?
胸の中のモヤモヤはだんだんとドス黒くなってくる。
昔話や学校のこと、静くんや他の子とのこと、たくさん話をした。そんな楽しい時間がずっと続くと思っていた。
夕飯は近くのレストランで済ませた。
車を使わないとどこに行くにも時間がかかるから酒は飲めない。
当たり前だが別々に風呂に入る。
来夢は俺が出てくるのを待っていた。
「ねぇダイ兄ちゃん」
Tシャツと短パンの格好はいたって普通だ。
そう自分に言い聞かせる。
脱がしてしまいたいなんて考えちゃいけない。
「どうした?」
「一緒に寝ちゃダメ?」
上目遣いに見られてそうだなと頷く以外の選択肢が見つからない。
まさかこんなに早く忍耐力を試されるとは思ってもみなかった。
今日は別々の部屋で、明日はもしかしたら……なんて考えていた自分を叱咤したくなる。
今日の俺は仏になる
「いいよ」
寝室のドアを開けて2人で入る。
元々両親は仲がいいからQUEENsizeのベッドが1つ置いてあるだけだ。
ベッドに入ると来夢は俺に背を向けて丸くなる。
これ一緒に寝てるって言えるのか?
「来夢」
肩がピクっと動く。
「なに?」
こちらを振り向くと顔も赤くなっている。
「こっちにおいで」
俺からは動かない。
コロリとこちらに転がってポスッと腕の中にくる。
綺麗に向かい合う形になる。
ぎゅっと抱きしめて頭に口付ける。
「何もしないから安心していいよ」
「ダイ兄ちゃん」
「どうした?」
「大好きです」
何もしないのが苦しい程可愛い。
「俺も大好きだよ」
「あの……明日は………えっちなこと、したいな」
胸に擦り寄りながら耳まで真っ赤にしてそんなことを言われてしまった。
俺からは誘えないと分かっているからなのか、それとも純粋にえっちな事をしたくて言っているのか……
色々と考えている間に来夢は眠ってしまった。
可愛い寝顔を見ていたら色々と考えている事がバカバカしく思えてくる。
俺も目を閉じていたらいつの間にか眠っていた。
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